初詣に合格祈願、安産祈願、厄除け…とかく日本人はお宮参りに行く機会が多いですね!「信心深くて良いではありませんか、何かご不満な点でもおありですの?」い〜え、そんなことこれっぽっちも思っていませんが、ちょっと気になったのはお宮参りの時におみくじをひいて、その後これを木の枝に結び付ける習慣です。「う〜ん、あらためて考えてみると、どうして木に結び付けるのかね〜?」はい、不思議ですね。おみくじを引く習慣は南北朝時代以降に中国から渡って来た『天竺霊籤(ティエンジューリンチェン)』が元(もと)であるようですが、この頃、紙はとても貴重なものだったので、たとえお宮といえどもありがたいおみくじを置き去りにするようなことはなかったように思います。今では、日本でも中国でもおみくじは神社や寺院のいたるところに結び付けられていますが、実はこのような習慣は紀元前既にあったのではという見方もあるようです。
これから咲き始める花木の1つにミツマタというものがあります。ミツマタはジンチョウゲ科ミツマタ属の総称で、長江流域以南各地およびヒマラヤ周辺が原産で、日本にも分布しています。ミツマタという名称は、この木の枝が伸長する過程において、新芽が常に3個発生し、三方向に延びていく姿を三又(みつまた)と見立てたようです。この木の有用性は、その繊維が紙の原料となり、日本銀行券、いわゆるお札(さつ)はこれを原料としています。
ところでこのミツマタ、中国名は結香(ジェシアン)です。「お、中国では三股(みまた)とか三枝(みえだ)って感じの漢字ではないんやね?」はい、ちょっと意外な名称に思えますが、「香(こう)」の字があるのは、ミツマタの花にはっきりとした甘い香りがあるからです。「なるほど、して、結(けつ)の字は?」それは願い事がある時、この枝を結ぶからです。「おっと、そうきたか〜!」はは、何とか冒頭の話に繋がりました。中国にはミツマタについての伝説があります。最後にそれを紹介して、今回は失礼します。
「秦(しん)の始皇帝(しこうてい)の時代、宮廷内に深く愛し合っていた恋人がいた。女性は高貴な家柄だが、男性は貧民の出だったため、結婚が許されず、別れる前に結香(ミツマタ)の枝先で結び目を作って関係に終止符を打った。不思議なことに、二人に結び付けられた結香(ミツマタ)はその年に限ってたくさんの花が咲き、とても濃厚な香りを放った。始皇帝は二人の愛が神に通じていると恐れ入り、二人を呼び戻し、夫婦になるように命じた。これより後、願いがある時に結香の枝を結びつける習慣が広まったという。」
執筆/愛知豊明花き流通協同組合理事長 永田 晶彦
※写真は広報紙30ページをご覧ください。
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