令和五年三月一日の定例教育委員会で、岡ノ町古銭出土地出土品が加茂市文化財に指定されましたので、紹介します。
■岡ノ町古銭出土地出土品(加茂市民俗資料館・個人蔵)
この出土品は加茂市岡ノ町の20mほど離れた2か所の地点からそれぞれ偶然発見されたものです。
清水邸出土品は昭和五十一年、浄化槽工事の際に見つかりました。
吉村邸出土品は昭和二十八年、宅地の土砂取り現場から発見されたと伝わっています。
どちらも、石川県能登半島にある珠洲窯で焼かれた珠洲焼壺の中に大量の古銭(中国からの渡来銭)を入れて埋めたもので、「一括出土銭」などと呼ばれるものです。
清水邸の珠洲焼壺は高さ約47cmの完形品で十四世紀初めころ、吉村邸の珠洲焼壺は口縁部の一部を欠損しますが、高さ約37cmのほぼ完形品で十三世紀終わりから十四世紀初めころのものと見られます。
清水邸の古銭は60銭種、14,145枚、総重量約46・6kg確認され、北宋銭が全体の約88%を占めています。最古銭が「五銖(ごしゅ)」(後漢:初鋳二四年)、最新銭が「至大通寳(しだいつうほう)」(元:初鋳一三一〇年)です。
吉村邸の古銭は35銭種、215枚、総重量約747gで、同じく北宋銭が全体の約90%を占めています。最古銭が「開元通寳(かいげんつうほう)」(唐:初鋳六二一年)、最新銭が「嘉定通寳(かていつうほう)」(南宋:初鋳一二〇八年)です。
珠洲焼壺の年代と最新の銭貨を指標とし、清水邸は十四世紀中頃、吉村邸は清水邸とほぼ同じか、やや早い頃に埋蔵されたと考えられます。
このように清水邸、吉村邸出土品はともに鎌倉時代のおわりころ、地域の有力者が大量の渡来銭を珠洲焼の壺に入れて埋めたものと考えられ、当時の地域社会や経済を物語る貴重な資料です。珠洲焼の壺もほぼ完形で、資料的価値が高いものです。
これらのことから、本資料は加茂市の文化財に指定するにふさわしいと考えられます。
問い合わせ:民俗資料館
【電話】52-0089
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