加茂養生訓 10(病なきとき、かねてつつしめば病なし)

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■ー癌という病気を探るその3ー
加茂病院　富所　隆
今回は、がんの原因についてお話しします。どこの臓器で発生するがんも、すべて細胞の遺伝子変異によって生じることが分かっています。何らかの原因で遺伝子に傷がつき、それを修復できなかったりすることで、今まで体の中には無かった変な細胞ができあがることが、がんの正体です。その原因は大きく3つに分けられます。

1つ目は環境要因。放射能やたばこの煙の中にある化学物質が代表です。塩分の取りすぎや、酒の飲みすぎ、さらに運動不足や偏食なども危険を高くする生活習慣です。
2つ目は感染症。胃がんを引き起こすピロリ菌、子宮がんの原因であるヒトパピローマウイルス、肝臓がんの原因であるB型・C型肝炎ウイルスなどが代表です。
そして3つ目が、傷ついた遺伝子を修復する力が生まれつき弱い方に発生するがんです(がん全体の10%ほどとされています)。

遺伝的な発がんはともかく、環境要因は以前お話しした健康長寿のための3つのポイントと全く同じだと気付かれたでしょうか。健康長寿のための生活のヒントは、実はがんを予防する生活習慣と全く同じことで、何も特別なことをするわけではないのです。
また、2つ目の感染症については、ピロリ菌は抗生剤を1週間内服することで、肝炎ウイルスは抗ウイルス薬を4週間服用、さらにヒトパピローマウイルスに対しては、何とワクチンで感染を予防できる時代になってきています。現在このワクチンは令和7年3月31日までの期間、平成9年4月2日から平成25年4月1日生まれの女性に対して無料で接種できる制度が運用されています(令和7年4月1日以降の無料対象者は小学校6年生から高校1年生までの女性に限られます)。

がんという病気の本質を知ることで、その予防法や治療成績は年々進歩しています。がんを怖がるだけでなく、きちんと向き合うことも大切ですね。