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市長日記ーむーけーげー(無罣礙)ー

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新潟県南魚沼市

■「凛」とした日本人
南魚沼市長 林 茂男

「ぜひ、連れてきなさい」当市出身のニューヨーク新潟県人会長の大坪賢次さんが背を押して下さったことが出発点でした。3年間足止めされ、ついに実現した米国への中学生海外派遣研修事業。この夏、希望が叶わなかった高校生の特別参加枠も設け、市内の中・高校生19人が参加しました。
大坪さんを陰で励まされたのが奥様の理恵さんだったそうです。「進路を決める前の中学生達を」と。残念ながら昨年亡くなられていて、2日先行した訪米団に遅れてニューヨークで合流した私はすぐに大坪邸へ御焼香に。私たちを歓迎いただいた県人会のみなさんとの会のご挨拶ではご協力への感謝の気持ちを述べた後、「この場に奥様がおられたらどんなに喜んでいただけたか」と私から。会長も大きくうなずかれ、みなさんから「今、見てくれていますよ」との声も。こみ上げるものがありました。
国際連合日本政府代表部では面会いただいた石兼(いしかね)公博(きみひろ)特命全権大使が「日本への世界からの信頼は大きく、それを失ってはならない」と若者たちに語られたことが強く印象に。大坪さんはこんなお話も。自身の事業の成功について「さぞかし大変なご苦労をされたでしょう」とよく問われるが、自分は「一度も苦労をしたと思っていない」そう言うと相手は怪訝(けげん)そうに。「今日より明日が面白い。後ろを振り返らずそう信じてやってきただけ」と。「ただ…、ここは異国。頭を天井にくっつける様に背筋を伸ばして歩き、どこで誰に見られ声を掛けられても恥ずかしくない気持ちでやってきた」と語られた。
両者のお話に、古く新渡戸(にとべ)稲造がその著『武士道』で世界に知らしめた宗教観を超える日本人の「軌範(きはん)」を感ぜざるを得ませんでした。県人会の方一人ひとり、国連や領事館で働く若い職員さんたちに、また彼の地で勉学に勤む留学生たちにも「侍」のような凛とした立ち姿が重なる。若い中・高校生たちにもそれは強烈な光線のように思えたのではないか、と。
第1期生は次期につながるがんばりを見せてくれました。この旅(派遣研修事業)を続けたい。いつか理恵さんが眠るサンフランシスコの墓前で奇跡のようなこのプロジェクトの軌跡を報告できるように。

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