■北里大学と大村智先生
南魚沼市長
林 茂男
雪国・魚沼圏で史上初となる4年制大学部。北里大学の9つ目の新学部「健康科学部」が今春、開設されました。心から喜びたいと思います。北里大学といえば、ノーベル生理学・医学賞受賞者で特別栄誉教授、大村智先生の存在はあまりに有名で、アフリカや中南米の人々を悩ませてきた熱帯病のオンコセルカ症(河川盲目症)を中南米で根絶させた治療薬イベルメクチンの開発者。もう生まれ来る子どもたちに失明の恐れはないという、黄熱病に挑んだ野口英世の再来のような方です。一方、先生は女子美術大学の名誉理事長でもあり、ご出身の山梨県韮崎(にらさき)市にある「韮崎大村美術館」の館長も。4千点を超える所蔵品から女性作家61人の作品97点をお借りし、学部開設と市制施行20周年を祝して市主催の特別展を、池田記念美術館で開催中です。
4月14日(日)には先生をお招きし、記念講演会を。ご一緒する栄に浴しましたが、御年89歳とは思えない壮健さと明晰(めいせき)な語り、気さくでざっくばらん、しかし眼光は実に深い。高校まで打ち込んだクロスカントリーは県内1位、県代表として全国大会にも。その頃は将来「研究者になるとは全く思わなかったよ」、自らを「異色の研究者」と楽しそうに語られました。生家は農家で長男。進学など考えもしなかったが、盲腸手術後の病床で本をむさぼり読む息子の姿に、ご尊父が「大学に進んでもいい」と言ってくれたことが転機だったと。豊かとはいえない実家、弟の学資を定時制高校の教師として働きながら支えたが、定時制教師は昼間は別の勉強ができたことが良かったそうで「1日を2倍使った」とも。講演のテーマは学術研究の道とは違う芸術、しかしその中に女性作家を通じた人生訓や探求心などさまざまにちりばめられてすばらしかった。終了後、聴講の女子高校生に囲まれてうれしそうに答えられていた先生の言葉が耳に。「つらい時どう乗り越えていかれたのですか」先生は「明日は絶対によくなるという信念。スキーと同じ、死ぬほど苦しくてもすばらしいゴールがあるよね」、そして「人との出会いを大切にすること」整然と並べられた展示場の絵画たちが話し出すように思えました。特別展は5月17日(金)まで。ぜひ。
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