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市長日記ーむーけーげー(無罣礙)ー

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新潟県南魚沼市

■今年もお盆がくるか
南魚沼市長
林 茂男

各地で多彩に繰り広げられた夏祭りもおわり、学校は夏休みに。今月はお盆がきます。正月よりも「また1年たつか」と年の重ねを思うのは私ばかりではないかもしれません。父を亡くしてからそれがより深くなったようで、若い頃とは違って親族や知人・先輩たちを送ることが増える、そんな年恰好(としかっこう)になったせいか、とも。感謝の念を忘れず、家族皆でご先祖様をお迎えしたいものです。えご練りと棒鱈(ぼうだら)煮を用意して。
今回は、いつか書きたいと思ってきた高校時代からの親友M君のお父さんのことを。教員をされていた親友の父上は多くのみなさんに慕われた人で、M君は大学卒業後、故郷へは帰らず在京で今も活躍していますが、父上は帰郷した私が時折お会いした際などに温かい励ましの言葉をかけてくださる方でした。4年前に訃報が伝えられ、その後再会した親友に聞かされた話に感じ入りました。
病床にあった父のもとに2人の兄、姉と末弟のM君が集った時のこと。彼我(ひが)ともに余命いくばくもないことを知る、お盆間近の頃。4人に先々の事を細やかに指示し、「皆で母さんを支えるように」と伝えたあと、「いいか」と改まってこう言ったそうです。「お前たちが仲たがいをした時には、化けて出るので覚えておけ」、そして「ああ、気分が良くなった。あとは皆で仲良く飲め」と。指示の中には、「謡(うたい)」を愛された父上らしく、その趣味仲間やお世話になった方々へ届けるようにと用意されていたお礼の品と届け先の名簿があり、堅気にも子どもたちはそれを残らず配り終えて、父に報告。程なく息を引き取られた。親友の弁では「人生にきちんと始末をつけて逝った。真面目一辺倒ではなく剽(ひょう)げた面もある、魅力的な男だった」
棺の蓋を覆いて人生定まる…。毛利元就(もとなり)の三本の矢の逸話も秀逸ですが、この話も実にいい。「○○の時は化けて出る」、私もいつか自分の子どもたちに言い放ってみたいが叶うかどうか。○○に何が入るかはまだまだ。それがお盆の時分なら、なお効果的かな。

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