文字サイズ
自治体の皆さまへ

「順三郎の散歩道」六

35/45

新潟県小千谷市

旭橋から上流に向かって右側に小高い崖がありますが、崖の上には詩集『Ambarvalia(アムバルワリア)』の中の「旅人」という詩の詩碑が建立されています。

旅人

汝カンシヤクもちの旅人よ
汝の糞は流れて、ヒべルニヤの海
北海、アトランチス、地中海を汚した
汝は汝の村へ帰れ
郷里の崖を祝福せよ
その裸の土は汝の夜明だ
あけびの実は汝の霊魂の如く
夏中ぶらさがつてゐる

この詩の前半は、西脇先生が28歳でイギリス留学中に訪れたヨーロッパの海を引き合いに出し、後半に故郷の崖を読み込んでいます。「カンシャクもちの旅人」は作者自身のことで、「ヒベルニヤの海」はアイルランドの海、「北海」はイギリスの北側の海、「アトランチス」はギリシャ神話に出てくる海の底に沈んだとされる伝説の島で、大西洋(アトランティック)の語源になっています。西脇先生が自らを「旅人」と称して、訪れた海を思い浮かべながら詠んだ詩です。ヨーロッパの海からいきなり「汝の村、郷里の崖」という表現は、「遠いものの連結」という西脇詩特有の場面構成です。「郷里の崖」は深地ヶ岨(しんちがはば)の崖のことで、崖の上には中世の深地城があったところであり、遠くに越後三山がそびえ、眼下には信濃川が流れる眺めの良いところです。

平成26年10月、西脇順三郎生誕120年を記念し、詩碑が建立されました。詩碑に刻まれた詩は西脇先生が亡くなられる3か月前に書かれたもので、これが絶筆となりました。眺望が良いところですので、ぜひ訪れてみて下さい。

(西脇順三郎を偲ぶ会会長 中村忠夫記)

問合せ:図書館
【電話】82-2724

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU