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「順三郎の散歩道」八

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新潟県小千谷市

今年も残りわずかになりました。雪降り前のこの時期、路傍(ろぼう)の草は枯れ、木々の葉はすっかり落ち、野山は蕭々(しょうしょう)とした冬枯れの季節になります。戦後まもなく出版された詩集『旅人かへらず』に出ている、この季節にふさわしい詩を紹介します。

一二二
十二月の初め
えのころ草も枯れ
黄金の夢は去り
夢の殻のふるえる

一二三
山の椿は
年中花の咲くこともなく
枝先の白い芽は葉の芽
花よりも葉の美しき
黒ずめるみどり
かたく光るその葉
一枚まろめて吹く
その頬のふくらみ
その悲しげなる音の
山霊にこだまする
冬の山の静けさ

ほかの難しい詩に比べ、なんと優しい、寂しい詩でしょうか。122番では、えのころ草を「黄金」に例え、枯れた後を「夢の殻」とみたのでしょうか。わずか4行の詩にしみじみとした思いが伝わってきます。

123番は、西脇先生が小春日和に誘われて近くの山に散歩に出かけ、冬枯れの藪(やぶ)の中にひっそりと繁(しげ)るユキツバキを見て詠んだのではないかと思われます。花よりも葉が美しいと、いかにも西脇先生らしい逆説的な表現と、緑の葉の表現は植物に詳しい詩人の豊かな感性に彩られ、最後の3行はもはや説明はいらない、とても美しい詩ですね。

(西脇順三郎を偲ぶ会会長 中村忠夫記)

問合せ:図書館
【電話】82-2724

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