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「順三郎の散歩道」三

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新潟県小千谷市

今年の梅雨明けはいつ頃になるでしょうか。「雨」を詠んだ詩は、北原白秋の「雨はふるふる 城ヶ島の磯に…」や、長岡市出身の詩人堀口大学が訳したフランスの詩人ヴェルレーヌの「巷に雨が降るごとく 我が心にも涙降る…」というような暗い、鬱々としたイメージがありますが、西脇順三郎先生の雨の詩はとても明るい詩です。


南風は柔い女神をもたらした。
青銅をぬらした、噴水をぬらした、
ツバメの羽と黄金の毛をぬらした、
潮をぬらし、砂をぬらし、魚をぬらした。
静かに寺院と風呂場と劇場をぬらした、
この静かな柔い女神の行列が
私の舌をぬらした。

この詩も詩集『Ambarvalia(アムバルワリア)』の中の「ギリシャ的抒情詩(じょじょうし)」の一つです。「雨」を「柔らかい女神」にたとえ、「ぬらした」という言葉をリズミカルに繰り返すことで心地よい気分にさせてくれます。噴水、潮、魚、風呂場など、もともとぬれているものをわざと「ぬらした」と繰り返しても、あまり違和感がないのも不思議です。最後に「柔らかい女神の行列」が「私の舌をぬらした」と少しエロチックに終わらせたところに西脇先生特有のウィットを感じます。

西脇先生は画家を志したことがあるため、キャンバスに絵を描くように詩を作ると言われていますが、この詩はまるでギリシャ神話に出てくる女神たちの水浴の場面のような絵画的な描写が感じられます。また3行目の「黄金の毛」は女神の髪を表現したようで、西脇先生の詩には「黄金」という言葉がよく出てきます。小千谷高校の校歌にも「千の谷錦に織られて 黄金の杯に…」とあるように、よほど「黄金」という言葉が好きだったようです。

(西脇順三郎を偲ぶ会会長 中村忠夫記)

問合せ:図書館
【電話】82-2724

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