最終回となる「順三郎の散歩道」で紹介する詩は、山本山山頂にある碑に刻まれている、詩集『旅人かへらず』の最後の詩です。
一六八
永劫(えいごう)の根に触れ
心の鶉(うずら)の鳴く
野ばらの乱れ咲く野末
砧(きぬた)の音する村
樵路(しょうろ)の横ぎる里
白壁のくづるる町を過ぎ
路傍(ろぼう)の寺に立寄り
曼陀羅(まんだら)の織物を拝み
枯れ枝の山のくづれを越え
水茎の長く映る渡しをわたリ
草の実のさがる藪(やぶ)を通り
幻影(げんえい)の人は去る
永劫の旅人は帰らず
詩集『旅人かへらず』は、短い詩168編からなる詩集ですが、日本人には古来、自然に対する「もののあわれ」を感じる優れた文化があり、敗戦後の荒れ果てすさんだ人々に、少しでも心の安らぎが持てるようにと詩に表現したかったのだと思います。どの詩を読んでもわかりやすい言葉で詠まれており、小千谷を詠んだ詩もいくつか散見されます。
この最後の詩は「砧の音する村」とありますので、多摩川近辺にある「砧村(きぬたむら)」という所を散歩した情景と思われます。山本山の詩碑の前に立ってこの詩を読むたびに、しみじみとした感動を覚えます。
12回にわたり西脇順三郎の詩を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。ひと・まち・文化共創拠点「ホントカ。」では西脇に関するコーナーができます。西脇先生の業績をぜひ身近に感じてください。
(西脇順三郎を偲ぶ会会長 中村忠夫記)
問合せ:図書館(4月1日(月)~にぎわい交流課共創推進係)
【電話】82-2724
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