日本一の大河・信濃川の河口に広がる新潟西港。
万代島地区に位置する漁港では、年間を通じてさまざまな新鮮な魚たちが水揚げされ、その種類は約140種類と言われています。
特に寒さが厳しい冬には、ズワイガニや南蛮エビ、脂の乗ったのどぐろなど、おいしい新潟の海の恵みを買い求めに地元の魚市場はにぎわいを見せています。
今号では、冬の新潟ならではの海の味覚として長年愛されている「あかひげ」について取り上げます。
■真夜中のあかひげ漁に密着!
午前2時の新潟西港。あかひげ漁を行う第三山栄丸が港に戻ってきました。
「今日は結構獲(と)れたよ。でも他のもいっぱい入ったね」と船長の五十嵐新二さんは、手に持った網を手際よくほどき、タライに移します。中をのぞくと太刀魚や鯛、ヒイラギと呼ばれる小魚などと一緒に小さな薄ピンク色のエビがびっしり。「この魚たちにくっついているのが、あかひげ。この後選別作業に入るよ」と、休む間も無く次の準備にかかります。鮮度が命のあかひげ。選別作業中は常に温度を10度以下に保つことが重要だと話します。
一連の作業を全て1人で行う五十嵐さんは、「あかひげ漁は手間がかかるし、その日によって漁獲量も全然違う。漁も真夜中に行うから家族の理解も必要。やっぱり漁が好きじゃないと続けられないね」と、はにかんだ笑顔で話しました。
この日の出荷は10kg。市場で最初のセリにかけられます。
■市場から食卓へ
この日セリ落としたのは、本町通11番町にある鮮魚店の櫻田(さくらだ)鮮魚(本誌写真参照)。
店主は「あかひげは市場に出ていない時もあり、なかなか手に入りません。この時期になると心待ちにしているお客さんも多いので、新鮮なうちにぜひ皆さんに味わってもらいたいです」と話します。
お店には、入荷を聞きつけた地元のお客さんが次々に訪れていました。どんな料理に使うのか尋ねると、「今日は天ぷらにしようと思います。あとは大根と一緒に煮物にしようかな」と購入したあかひげを大事そうに抱え、お店を後にしていました。
■「あかひげ」とは? 知ってる?
あかひげはサクラエビの仲間で、標準和名はアキアミ。県内では信濃川と阿賀野川河口のみで獲(と)られ、漁獲時期は、11月~3月ごろです。
現在、新潟西港においてあかひげ漁を行っているのはわずか数隻。漁獲量も減少し、そのおいしさを知る人も年々減ってきています。
※殻が薄く、くせのない上品なエビの風味が特徴。
◇あかひげ漁船数と漁獲量の推移(新潟漁業協同組合新潟支所管内)
「漁獲量は年によって変わるんだね」
今やなかなか手に入りにくい「あかひげ」。
本町市場などでは、新鮮なあかひげを塩辛にして販売していることもありますので、見かけた際は、新潟の伝統の味をぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
■旬の味覚を味わう あかひげレシピ公開中
新潟魚食普及の会ではあかひげレシピなどをホームページ(本誌の二次元コード)で公開しています。
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