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市長随想

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新潟県柏崎市

■風に吹かれて
市長 櫻井雅浩

「あれっ?市長じゃないの?」
「動かないよ。生きてるよね?」
鯨波・東の輪「御野立公園」でベンチを背もたれに海を眺めながら、村上春樹氏の新作を読んでいたのだった。誰も来ないだろう、と思っていたのだが、3組の歴史ファン?が通り過ぎた。その中の1組のヒソヒソ話である。
連休の一日、帰ってきた三男を含め、それぞれ用事があり、私1人取り残された。置いてけぼりである。涙を流しながら小さなリュックにコーヒーの入った水筒、缶ビール、柿の種、ウインドブレーカー、本も入れ、1人歩き始めたのだった。途中柏崎港「夕海」に立ち寄り、番神の畑で草刈りをしながらなので往復9km、約5時間「大人の遠足」である。
ご承知の通り、御野立公園は戊辰戦争の一場面を形成した。新政府軍と幕府軍がそれぞれの理想と現実に悩み、戦火を交えたのは約155年前である。村上春樹氏のテーマは「私」と「影」であり、意識と無意識のパラレルワールドである。そして、その交差ではないか。図らずも御野立公園がその読書にふさわしいように思えたのだった。
別の日も同様で、涙と共に車で「道の駅風の丘米山」に向かった。タニウツギの花に熊蜂がにぎやかである。海と米山を左右に、風に吹かれ、コーヒー、チョコレートを口にしながらページをめくる。今度は誰も来ない。私の読書には誠に好都合なのだが、道の駅としては困ったものである。
米山大橋は昭和42(1967)年に完成した。以来60年近く、市外からのお客さまを最も集めるエリアである。米山の緑、海の青、橋脚の赤は自然と人工物の美しき交差である。
8号線を挟み、国、民間、市、歴史、伝統、コレクション、防災、大人、子ども、センス、新たな「パラレルワールド」を計画中である。

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