■夏の一日、55年前
市長 櫻井雅浩
♪新しい朝が来た 希望の朝だ♪
と「ラジオ体操の歌」は始まる。ああ、そうだったね、と思い出す人も多いだろう。
子どもの頃、夏休みが始まるとひもの付いたラジオ体操カードを首にかけ、ランニングシャツと半ズボンで家を出た。近くのお寺の境内で「それ、イチ、ニ、サン」と歌い、第一、第二と体操をして、裏浜(今のみなとまち海浜公園あたり)までマラソン(その頃ジョギングという言葉はなかった)。戻ってくるとカードにハンコがもらえた。
いったん家に帰り、朝ごはん、すぐにタモを持ち、そのままセミ捕りにいった。毎日繰り返す。地上でのはかない人生、いやセミ生?を知らずいったい何匹のセミを捕ったのだろう。
アブラゼミの幼虫が地上に出てきて、透き通るような白と葉脈のようなエメラルドグリーンを携えた羽を伸ばそうとしているときの美しさは例えようもない。夏も終わりに近づくとヒグラシの「カナカナカナ」という声は物悲しい。
中学生ともなると部活動、陸上競技場。走りに走った。石炭ガラがまかれたトラックとオールウェザーラバーで新装されたフィールドの一部。真夏の競技場は独特の匂いがした。スタンドでの休憩時、浜風が心地良かった。優秀な選手にはなれなかったが、今の私の基礎を作ってもらった。休日には自転車にまたがり、番神の海へ通った。
先般「夏休みをやめてもらいたい、短くしてもらいたい」という親が一定数いる、との調査発表があった。昼食など生活費がかかる、というのが理由の一つだという。ドラマではないが、はて?と考えるところである。今の子どもたちはどんな夏休みを送っているのだろう。楽しい思い出をたくさん作ってもらいたいと願う。私たちはそのお手伝いをしたい。
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