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長岡空襲から79年 次世代に語り継ぐ平和への願い(1)

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新潟県長岡市

昭和20年8月1日の長岡空襲。長岡市は市街地の約8割が焼け野原となり、1,488人(同年7月20日の模擬原子爆弾による殉難者4人を含む)の尊い命が奪われました。当時7歳で戦火を逃れた伊丹功さんから、空襲の悲惨さと平和への想いをお聞きしました。

◆伊丹 功(いたみ いさお)さん(85歳)
祖父の代から神田町で洋品店を営む伊丹さん。空襲当時は祖母と両親、2人の姉、弟の7人で暮らしていました。趣味は貼り絵と水彩画です。今年、日本水彩展で入選し、東京・上野にある東京都美術館に作品が展示されました。

空襲があった夏、私は神田国民学校(現・神田小学校)の1年生。まだしわもないランドセルを背負って通学していました。食糧はほとんど配給だけ。学校帰りに野草を採って夕食の足しにする貧しい生活でしたが、それなりに楽しく過ごしていました。
そんな生活が一変したのが8月1日の夜―いつものように祖母と寝ていたら突然、「おい、大変だぞ!」という父の叫び声。びっくりして飛び起きました。弟を背負った母に抱き上げられ高窓から外を見ると、宮内方面の空が赤くなっていたんです。警報も聞こえて空襲だと気付き、避難用に枕元に置いていた新品の靴を急いで履いて外に出ました。暗闇の中、たくさんの人が行き交っています。水道タンクを目印に、信濃川の土手へ家族全員で向かいました。
当時の水道タンク周辺は一面が田畑。ぬかるんだあぜ道に足を取られ、片足の靴が脱げてしまいました。靴は泥にはまって取れません。逃げ遅れそうになったので靴は諦めて、父に手を引いてもらい先を急ぎました。

▽水道タンクの上を爆撃機が次々と飛んだ
信濃川の土手にたどり着くと、避難した人でいっぱいです。なんとか場所を確保し、防空頭巾代わりに持ってきた布団に家族でくるまっていると、どんどん空襲が激しくなりました。水道タンクの上を爆撃機B29が次々と飛び、焼夷弾(しょういだん)を落とします。爆弾はキラキラと輝き、まるで花火のようでした。時折サーチライトが市街地を照らすと「味方の飛行機が敵をやっつけに来たんだ」と思いましたが、空襲は止みません。逃げてきた町並みが炎に包まれていく様子が次第に恐ろしくなり、母にくっついて布団に顔をうずめていました。
しばらくすると近くの作業小屋に火がついたんです。その場にいられないほどの熱気に包まれたため、川辺まで下りてじっと耐え続けました。
朝になり、家のあった場所に戻ると、一面が焼け野原でした。近くの製油所からは炎が上がり、黒煙が広がっていました。普段は見えない長生橋が、この時はよく見えたのを覚えています。現実とは思えないことの連続で、悲しみや怒りを感じることはなく、ただただ驚いていました。

▽67歳から始めた水彩画きっかけは戦災資料館
趣味でちぎり絵を楽しんでいた平成18年、戦災資料館から「空襲体験画を描いてみませんか」と声が掛かりました。当時は絵を描いた経験はありませんでしたが、迷うことなく受けました。空襲の記憶を風化させないためにも「描かなきゃいけない」という使命感がふつふつと沸いてきたんです。戦争から60年経っていましたが、筆が迷うことはなく夢中になって描きました。気付いたら、買ってきた画用紙10枚を全て使っていました。
絵は今でも描き続けており、市の美術協会の会員になるほどのめりこんでいます。

▽空襲体験画を見て平和を考えてほしい
平和とは何なのか。あの日から考え続けていますが、いまだに答えは出ません。一つ言えるのは、戦争は絶対にしてはいけないということ。悲惨なだけです。多くの人にそのことを伝えたい。そして、平和について考えてほしい。私の体験談と空襲体験画が、そのきっかけとなってくれればうれしいです。

空襲の記憶を風化させてはいけない。そんな使命感に駆られて空襲体験画を描きました。

◆8月 平和を祈る行事
▽1日(木)
(1)戦災殉難者慰霊祭
時間:午前6時から
場所:平潟公園(表町1)

(2)戦災殉難者墓前法要
時間:午前7時から
場所:昌福寺(四郎丸4)

(3)2024平和祈願祭~空襲で亡くなった子どもたち・教職員と市民を追悼する集い~
時間:午前8時~8時30分
場所:平和の森公園(本町3)

(4)長岡市平和祈念式典
時間:午前9時~10時
場所:アオーレ長岡

(5)鎮魂たむけの花
時間:午前10時~午後4時
場所:長岡戦災資料館

(6)ながおか平和フォーラム
時間:午前10時15分~11時50分
場所:アオーレ長岡
内容:中学生平和作品発表、ウクライナ出身の歌手・ナターシャ・グジーさんによる歌唱など

(7)市民におくる映画の集い
時間:午前10時15分~11時50分
場所:アオーレ長岡
内容:アニメ映画「火垂(ほた)るの墓」上映

(8)柿川灯籠(とうろう)流し~皆で繋ぐ慰霊の灯火~
時間:午後6時~9時(セレモニーは6時から)
場所:柿川(一之橋~追廻橋付近)

(9)慰霊の花火「白菊」の打ち上げと梵鐘の打ち鳴らし
時間:午後10時30分から

※(4)(6)は各支所で中継を視聴できます(ナターシャ・グジーさんの歌唱を除く)

▽31日(土)まで
長岡空襲殉難者遺影展・戦災住宅焼失地図展
時間:午前10時~午後4時
場所:長岡戦災資料館

▽10日(土)~18日(日)
平和作品の展示
場所:まちなかキャンパス長岡
※入賞者は本紙をご覧ください。

問合せ:庶務課
【電話】39・2203

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