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健康講座(237)

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新潟県関川村

■坂町病院の展望
〜今後の中小規模病院の行方〜
坂町病院 副院長(内科)近 幸吉

平成8年4月、私が当院に勤務を開始した頃は、内科、外科、産婦人科、小児科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻科8つ診療科、最大17人の常勤医が勤務している時期がありました。いわゆる”ミニ総合病院”でした。
その後平成16年4月より始まった新臨床研修制度により、中小規模病院からの医師の引き上げが始まりました。それまでは医学部を卒業するとすぐに専門科を決定し大学の医局に所属し研修を開始していました。しかしこの研修制度により卒後2年間はどこの医局にも属さず全科を満遍なく研修することとなりました。大学医局は丸々2年間医局員の補充ができなくなりました。そのため優先順序として高次機能病院の充足を優先したため各地の地域の中小規模病院からの医師の引き上げ(高次機能病院への配置)が始まりました。また同時に県内で研修する研修医も激減し大学の医局もさらに人員不足に陥り非常勤医の派遣も厳しくなってきました。
また平成26年9月に国より突然発表された地域医療構想(機能の似通った近隣の病院は統合を進めていくという構想)、ここ数年の県立病院、厚生連病院の経営赤字は、病院の医師不足に加え病院の存続を心配する声さえ聞かれるようになってきました。
さて、今後、中規模病院である坂町病院はどうあるべきでしょうか。効率と非効率の判断基準で企業も行政も進路を進めているように思います。医療もかかりつけ患者さんを診る診療所、クリニックと高次機能医療を提供する大規模病院の2つ集約することがあたかも効率化のように考えられている風潮もあるようです。しかし、実際の医療はいかがでしょうか。
救急医療について言うと高度医療を行う大規模病院は、心筋梗塞、くも膜下出血、交通事故による多発外傷などに対応するのに十分な医療設備、人員を整えています。ここに高齢者の誤嚥性肺炎、尿路感染症、心不全などの”高齢者救急”が全て集中すると本来の大規模病院の機能が発揮できなくなってしまいます。
また、大規模病院で急性期管理を終えた高齢の患者さん、大腿頚部骨折手術後、脳血管障害の急性期治療を終えた患者さんなどは、その後のリハビリ、これまでできたことができなくなった場合、退院後どこでどのように過ごすか(退院調整と言っています)の方向付けが必要です。このリハビリ、退院調整の期間(こういった期間を”亜急性期”と言っています)を全て大規模病院で過ごすとなると高度医療の供給が滞ります。
今後、中小規模病院の役割としてこの高齢者救急と亜急性期入院の入院ベッドの提供が重要です。平成8年当時リハビリは理学療法士1名、医療相談員0名でした。それが現在ではリハビリは7名、令和2年4月より嚥下障害の評価、リハビリを担当する言語聴覚療法士も常勤しています。また、退院調整を担当する医療相談部署も令和5年4月より患者サポートセンターとして整備され総勢6名となっています。新発田病医院の入院分布を見ても令和5年の統計ですと高度急性期・急性期入院は41・6%に止まっています。県北の高次機能医療提供を安定させるため、坂町病院はこれまで以上に高齢者救急、亜急性期入院を積極的に担っていく準備はできています。疾患ごとにまた疾患の病期ごとに適切に入院病床を振り分けて使いこなしてゆくことが真に効率的な医療提供となると思います。
糖尿病教育入院、小児食物アレルギー試験入院、嚥下障害対応入院、訪問看護ステーションと協働した訪問診療を含めた在宅診療などの坂町病院の強みに加え今後高齢者救急、亜急性期入院の受け入れを積極的に進めることによって、診療科の減少、医局員の減少はあるもののまだまだ輝ける病院になるチャンスは十分あると思います。

*このコーナーへのお問い合わせは、県立坂町病院へ。

問合せ:【電話】62-3111

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