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さまざまな人が暮らす「東京」バリアフリーを考える(2)

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東京都 クリエイティブ・コモンズ

■書家 金澤翔子さん、母・泰子さん 特別インタビュー
生後すぐダウン症と診断された書家の金澤翔子さん。5歳から書家である母・泰子さんに師事し書を始め、これまで、NHK大河ドラマの題字、東京2020大会公式アートポスター、天皇御製の謹書など、幅広く活躍されています。
このインタビューでは、翔子さんと二人三脚で「書」の道を歩んできた母・泰子さんに、表紙の題字への思いや、翔子さんの日常の様子についてお聞きしました。

●表紙の題字「想(おもい)」について
―「想」という字を書いていただきましたが、どのような想いをこめられたのでしょうか。

翔子が作品を制作する際の心境は、とてもシンプルで純粋なものです。見る人に喜んでもらいたい、幸せになってほしい、笑顔になってほしい――そういった願いだけを胸に、筆をとります。今回の「想」という字も、きっと誰かの幸せや笑顔を想いながら書いたのだと思います。翔子の字で少しでも温かい気持ちになっていただけたら、これ以上の喜びはありません。

―そのような想いをもってこれまでお母さまと歩んでこられたのですね。

人は想いの中で生きています。その想いが深ければ深いほど、困難を乗り越える力になります。このことを日々の生活や翔子との時間を通して改めて実感しています。

●心の持ちようと周囲の愛情が共に生きる力へ
―周囲の方の配慮など、日常生活の中で嬉しかったエピソードはありますか?

翔子が近所のお肉屋さんに行くと、店主の方が「今日はどんな料理を作るの?」「何人で食べるの?」と聞いてくれ、それに合うお肉や量を用意してくれます。こうしたやり取りが翔子の住む地域のお店では日常のように行われていて、周囲の方たちの温かさに、日々感謝しています。

―心温まるお話ですね。

翔子はどんな人に対しても心を開き、愛をもって接しています。そうすることで、多くの人に愛され、自然と周囲の方々が翔子に合わせた理解や工夫をしながら共に歩む関係が築かれました。翔子の姿勢が、人との壁を取り払い、共生の道を開いてきたのだと思います。

―お互い想いあう事で共に歩む関係が築かれたのですね。お母さま自身が大切にされている想いはなんでしょうか?

過去にけがをして車椅子を使ったことがありますが、スロープやエレベーターなどが設置されていて大変助けられました。このような環境の整備はとてもありがたいことですが「これが無ければ困る」とは考えず、いかに自分が現実を受け入れるかが大切だと考えています。環境がどれだけ整ったとしても、それ以上に、自分の心の持ちようと周囲の愛情が、共に生きる力を育んでいくのだと感じています。

●翔子さんの今後の活動について
―今後、翔子さんとどのような表現を続けていきたいとお考えでしょうか。ぜひ教えてください。

翔子は多くの方々に支えられて書家として活動を続けており、私が元気なうちはその姿を見守り、応援してくださる方々の期待に応えたいと考えています。しかし、現在80歳になった私にとって一番心配なのは、親亡き後の翔子のこと。一人で書道を続けるのは現実的に難しいと感じています。また、これまで二人三脚で築き上げた信頼関係や距離感、空気感なども作品作りに影響しますので、誰かにお願いするのも難しい。二人で考えた結果、私がいなくなった後、翔子には喫茶店の接客スタッフとして新しい道を歩んでもらおうと考えています。
喫茶店は人が集まる温かい場所。翔子は何より人と接することが大好きで、サービス精神に溢れていますので、地域の方々にコーヒーを提供し、その関わりを通して共生しながら自立して生きてほしいと願っています。私も残りの時間を、翔子の姿を見守りながら、穏やかな気持ちで過ごしたいと思っています。現在、大田区久が原にある翔子の画廊を喫茶店に改装しています(画廊は2階に移設し、引き続き運営予定)。12月の中旬にはお店をオープンする予定ですので皆さんぜひいらしてください。

―最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

翔子の成長を通して思うことは、何かをやる時に、周りの人よりもちょっとだけ時間がかかるだけで、できることもあるということです。時間はかかりますが、やり遂げることが達成感と自信につながると考えています。「本人に寄り添い、待っていてあげる」、そんな気遣いがきっと良い環境につながっていくのではないでしょうか。

■今号の表紙
●金澤翔子さん
1985年東京都生まれ。5歳の時に、書家である母・泰子に師事し書を始める。伊勢神宮や東大寺など神社仏閣の総本山や大本山にて奉納揮毫(きごう)や個展を開催。自身の代表作「共に生きる」を合言葉に、共生社会の実現に向けた活動にも継続的に取り組んでいる。

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公式【HP】https://k-shoko.org/

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