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江戸の匠の技を今に伝える東京の伝統工芸品(5)

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東京都 クリエイティブ・コモンズ

■多摩織(たまおり)
多摩織とは八王子市周辺で作られていた八王子織物をルーツとする5つの織物の総称です。八王子は古くから養蚕と織物業が盛んで、その伝統が引き継がれてきました。

▽御召織(おめしおり)
糸を強くねじり合わせた強撚糸(きょうねんし)を織り込み、表面に凹凸をつけた織物。

▽風通織(ふうつうおり)
二重織りの一種。布と布の間に隙間があり、風が通ることからその名がついた。

▽紬織(つむぎおり)
不均一な太さの紬糸が表面に小さなこぶとして現れ、独特な風合いを生み出す。

▽もじり織(おり)
糸をねじる(もじる)織り方で、生地に隙間と透け感を出した織物。

▽変(かわ)り綴(つづれ)
綴織(つづれおり)とも呼ばれる織物で袴の生地として使われる。しっかりとした手触り。

●下準備が7~8割!
完成まで約2カ月かかるものも

「織物」と聞くと織る作業を真っ先に思い浮かべますが、実は全工程の約7~8割が糸の選定や染め、たて糸の長さと必要な本数をそろえる「整経(せいけい)」などの下準備となります。2色以上に染め分けられた絣(かすり)糸を使用する絣柄の場合、その染色期間も含めると完成まで約2カ月かかります。

●高度な技術や経験を要する「ずらし絣(かすり)」

▽絣(かすり)くくり
染めたくないところを糸で縛り、染め残すことで柄のある糸(絣糸)に。

▽ずらし絣(かすり)
染め分けた絣糸、約8,000本をずらしてたて糸を整えていく。この「ずらし」が抑揚に富んだ動きを生み出す。
ずらし終わったたて糸。

▽製織(せいしょく)
織り進むうちにたて糸がずれていかないよう、ひと織りごとに織り具合を微調整し、織り上げていく。

◎挑戦することで伝統を守る、職人の思い
多摩織のすべての技術を継承し、その伝承や普及に取り組む伝統工芸士、澤井伸さん。「伝統工芸は同じ物を作り続けていればよいものではなく、常に変化していかなければいけない」という思いのもと、多摩織の技術をストールなど現代の商品に取り入れて発展させてきました。

・多摩織の技術を駆使したウールストールはMoMAコレクションにも選ばれ、海外でも高く評価されている。

◎他業種とのコラボで伝統技術を後世へ
このほか澤井さんは大島紬に使用される絣糸とカシミヤシルクを組み合わせたストールの制作や、有松絞りの職人に自社開発のハンカチーフを絞ってもらうなど、他業種とのコラボにより、新たな価値を生み出しています。
「新しいことに常にチャレンジしていくことが、結果的に伝統を守り伝えていくことに繋がっていく」。澤井さんの挑戦はこれからも続いていきます。

澤井伸さん
昭和25年東京都生まれ。澤井織物工場4代目。平成28年に「東京マイスター」、同30年に「現代の名工」を受賞し、令和3年にはその卓越した技能と功績から黄綬褒章を受章。多摩織の技術伝承や長年の功績から同6年名誉都民として顕彰された。

協力:(株)高橋工房、(株)真多呂、(有)澤井織物工場

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