中野区産の農産物を食べたことはありますか。実は、区内にも畑があり、安全でおいしい野菜や果物を育てる農家の方がいます。
今号では、区内で農業を営む二人に話を聞きました。
松本さん:
農園の所在地…大和町
好きな野菜…トウモロコシ
早舩さん:
農園の所在地…上鷺宮
好きな野菜…枝豆
■農業を始めたきっかけは?
松本:15年前父が定年退職の年齢になり、そろそろのんびり過ごしてほしいと思い、サラリーマンをしながら農業を手伝い始めました。力仕事を要する農作業と父の年齢を考え、本格的に就農することを考えるように。無農薬野菜に興味もあり、仕事を辞めて畑を継ぐことにしました。
早舩:約10年前に父が他界しました。生前、「好きな仕事をしてくれ。ただ何かあった時は畑を頼む」と言われていたため、仕事を辞めて就農することに。それまでは、週末に少し手伝う程度だったので、不安の入り混じった就農でした。
■始めてみてどうでしたか?
松本:甘く見ていました。種を植えたら育つものだと思っていましたが簡単にはいきません。興味があった無農薬栽培にも挑戦しましたが、10日後には全て虫に食べられてしまいました。これは本気で向き合わなければと思い、JA東京中央(東京中央農業協同組合)や東京都が開催しているセミナーなどに参加しました。
早舩:私も苦戦しましたが、セミナーがとても役に立ちました。先輩農家の畑を見学することができるプログラムでは、実際にやり方を見て、直接経験談を聞くことができ、とても勉強になりました。
松本:約2年間のプログラムだったのですが、1年でできる人もいれば2年掛かってもうまくいかない人もいます。畑によって、土や気候などの環境が異なるからです。失敗したら、次に挑戦できるのは1年後の同じ季節。自分の畑の正解を見つけるために、何度も試行錯誤する必要があるのです。
■大変なことは?
松本:最も大変なのは夏の暑さ対策です。ホースから出る水がお湯のように熱く、水やりをするとゆだってしまうほどです。遮光のためのビニールハウスもサウナ状態。作業の開始時間を早めたり、資材の色を黒から白に変えたりと、少しでも暑さの影響を軽減できるよう工夫しています。
早舩:区内には畑が少なく、農地(生産緑地地区)面積を合わせても甲子園球場のグラウンド分くらいしかありません。農産物を生産できる量には限りがあるため、収穫時期の異なる農産物を組み合わせて育てています。
多くの種類の農産物を育てるためには、幅広い知識が必要です。都市部は農家が少ないので、農家同士で密に情報を共有しています。JA東京中央で、足の不自由な農家の方をみんなで支える場があります。地域の農家で協力し合いながらも、他の農家の方のやり方を見たり、おいしかった野菜や害虫の対策などの話を聞いたりと良い機会にもなります。
■工夫していることは?
早舩:元々、農薬をなるべく使わない農業を行っていて、今年「東京エコ25(※)」を申請しました。東京エコ25に認証されることによって、環境に優しい農家であると対外的に認められることになります。より多くの方に中野区の農業を知ってもらいたいと思っています。
松本:これからも安全で安心な農産物をみなさんにお届けするために、より多くの農産物が東京エコ25に認証されるよう工夫していきます。
※東京エコ25:化学合成農薬と化学肥料を削減して作られている農産物に与えられる認証
■どんな時にやりがいを感じますか
早舩:近隣の方と積極的に話したり、実際に採れたての農産物を食べてもらったりして、コミュニケーションを大切にしています。「おいしかった、次はこんな野菜が食べたい」と言ってもらえると、うれしくなります。
松本:2011年の東日本大震災の時、福島から避難してきた農家の方が「まさか東京で朝採れの野菜を食べられるとは思っていなかった」と感動してくれました。農業をやっていて良かったと感じました。これからも多くの方に新鮮でおいしい農産物を届けたいです。
■今後の目標を教えてください
早舩:都市部に住む子どもたちは、普段食べている野菜がどのように作られているのかを知らないことが多いです。子どもたちの食育につなげるため、区内の小学校3年生の社会科見学で、農業を学ぶ場を提供しています。農業に興味がなかった子が、見学を通して農業や食に興味を持ち、食べることを楽しめるようになることで、健康な体を育むことができます。中野区の農業を知れる機会になればと思い、続けています。今後は、近隣区と協力し、東京都産の農産物の魅力をもっと知ってもらえるよう連携を強化したいです。
松本:「どうして中野区で農業をしているの?」と聞かれることがあります。私たちは、農家が少ない中野区だからこそ、地域の方が農業を身近に感じる機会を残していきたいのです。ぜひ、中野区産の新鮮な農産物を食べてみてください。
■農産物即売会(11月12日(火))
時間:午前10時~午後4時
会場:区役所1階
☆当日直接会場へ。売り切れ次第終了。
マイバッグをお持ちの方は持参を
◇こちらでも購入できます~JA東京中央ファーマーズマーケット荻窪
所在地:杉並区阿佐谷南3-13-2
営業時間:火〜日曜日、午前10時~午後4時30分
☆祝・休日、年末年始除く。
販売する農産物は、時期によって異なります。詳しくは、JA東京中央ファーマーズマーケット荻窪【電話】5349-8791へ問い合わせを
問い合わせ先:地域経済活性化係/8階
【電話】3228-5707【FAX】3228-5456
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