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(コラム)
■建替えで一番大切なことは…
マンション管理士 飯田勝啓(いいだかつひろ)
築年数を経過すると「そろそろ建替えを考えなくては…」と思われる方も多いと思います。この問題を先送りにするマンションが多い中で、こういう意識を持つことはとても大切です。
では、実際の建替え検討の進め方等を説明します。まずは、このテーマを検討する会(例えば、『再生検討委員会』)の立ち上げです。理事会で検討するのもよいのですが、理事会ではほかにも検討しなければならない日常管理の案件が山積しているのが実情です。そのため、別の委員会組織を立ち上げることがお勧めです。この際、注意していただきたいのは『建替えありき』の検討から始めないことです。マンションにはさまざまな区分所有者、居住者がいます。そのような中で突然『建替え』を持ち出すと、初めて聞いた方はびっくりして冷静に考えられず、その結果として感情的な対立を生んでしまうことがよくあります。だから、『建替え』を決め打ちするのではなく、建物の『維持延命』も選択肢に入れ、そこから検討を始めることが大事なポイントです。その観点からすれば会の名称は『建替え検討委員会』よりもより広い意味で『再生検討委員会』とする方が自然です。
もう一つ大事なことは『初期合意』です。多くの場合、建物の再生に向け長い道のりの合意形成を進めていくわけですが、初期段階での合意ができているか否かで成否を左右します。管理組合によっては、知り合いのデベロッパーなどに声をかけ「今、建替えしたら、どんな建物が建って、費用はいくらかかるの?」と聞いて回る場面が見られます。しかし建替えを業とし、それを得意とするデベロッパーに対して安易に建替えプランを求めるのは『初期合意』を吹っ飛ばして、いきなり次の段階に進めるようなものです。その結果、一部の区分所有者などから反対の声が上がり、場合によっては管理組合の分断、そして計画の頓挫という末路をたどることが想定されるのです。
高経年化したマンションの建替えを成功させるのであれば、一部の方だけが旗を振り、建替えに猛進するのではなく、区分所有者や居住者に丁寧な説明と時間をかけた合意形成が不可欠です。建替えに関して悩みがあれば、まちみらい千代田に相談されてはいかがでしょうか。
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