■馬琴最後の超大作 南総里見八犬伝
馬琴の作品の中で最も有名なものといえば、『南総里見八犬伝』。同作は全98巻、106冊の長編読本で、1814年の刊行から1842年までの28年の月日をかけて完成させた大作です。5巻で1輯(しゅう)を基本としていましたが、全体の半数以上を第9輯が占めるという異様な構成になっています。これは、馬琴が陰陽道の陽の極数である9にこだわったものといわれています(一部上下巻で構成されているため、巻数と冊数は合わなくなっています)。物語は「回」に区切られ、上下回に分かれることもありますが、なんと第180回は5分割されています。執筆は長期にわたり、馬琴の視力が徐々に衰え、1840年には本人による執筆が不可能になったといいます。以降は息子の嫁の路(みち)が馬琴の口述を筆記しました。八犬伝以後も路を筆記者として執筆を続けましたが、作品の完結を見ないまま、81年の生涯を終えました。
◆書肆街と神田神保町
書店街といえば神田神保町。しかし、江戸時代は書肆街といえば日本橋界隈で、当時の神田神保町には武家屋敷が立ち並んでいました。明治時代になって武家屋敷がなくなり、周辺に法律学校ができると本の需要が高まり、神田神保町は書店街として発展していきます。現在では、それぞれの書店が独自色を出し、多くのファンでにぎわいを見せています。秋には古本まつりやブックフェスティバルなどで大盛況です。
◆区内で馬琴の史跡を見る
◇滝沢馬琴宅跡の井戸(都指定旧跡)(九段下1-5-7)
1793年に婿入り後は元飯田町中坂に住み、居宅跡には井戸枠が設置されています。馬琴が硯に水を注いで筆を洗ったとされ、「硯の井戸」と呼ばれています。
◇滝沢馬琴住居跡(外神田3-5)
1824年に元飯田町中坂から息子の住む外神田に身を移し、1836年に四谷信濃坂(現・新宿区信濃町)に転居するまでの12年間ここで暮らしました。
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