
(連載)
■成功者から学ぶこと
中小企業診断士 三浦 英晶(みうら ひであき)
成功した起業家は、どのような意思決定をし、どのような思考プロセスを経ていたのか。このことについては、統計結果(論文)が発表されています。サラスバシーという学者が提唱した「エフェクチュエーション」には、成功した起業家の特徴が「4つの原則」と「1つの世界観」としてまとめられています。
◇原則1「手中の鳥」の原則
この原則は、「目的」ありきでなく「手段」ありきで、成功した起業家は意思決定・思考する傾向が見られた、ということです。「目的」のために必要な手段を揃えるのではなく、「手持ちの手段」で「すぐに始める」というスピード感です。そのためには「手持ちの手段」として、自分や、自分のネットワークでできることは何かを明確にしておく必要があります。言い換えると「経営資源の棚卸し」をすることです。多くの中小企業・小規模事業者は、大企業よりも経営資源が非常に少ない中で、大企業と戦い、思い描く事業を実現していかなければなりませんので、多くの中小企業・小規模事業者に当てはまる考え方ではないでしょうか。
◇原則2「許容可能な損失」の原則
この原則は、「成功」ありきでなく「失敗」ありき、ということです。現在のような不確実性の高い状況下では、成果が出るかどうかは、やってみないと分かりませんので、仮に失敗したとしても、許容可能なのかどうかを基準に意思決定することが望ましいと考えられます。例えば、「1,000万円つぎ込んで失敗しても次の事業に取り組めるけど、5億円つぎ込んで失敗したら破産すことになるからやめておく」といった判断です。言い換えると、「ハイリスク・ハイリターン」ではなく「ローリスク・ローリターン」を狙うことです。
◇原則3「レモネード」の原則
この原則は、「アクシデント」を活用する、ということです。不確実性の高い状況下では、予測できない事態は必ず起こる、ということを前提にした場合、失敗も発想の転換で新しい製品・サービスのアイデアになる、という考え方です。これは、昔からの言葉の「失敗は成功のもと」と同じ考え方ではないでしょうか。
◇原則4「クレイジーキルト」の原則
この原則は、「パズル」でなく「パッチワーク」、ということです。「あなたはお客様」とか「あの会社は競合だから」といった区別をせず、つながれる人とは全てビジネスパートナーとなることで、当初の想像を超える結果(より良い商品・サービス、より良いビジョン)を得られる可能性が高まります。
◇世界観「飛行機の中のパイロット」
これは、エフェクチュエーションの考え方全体に通じる世界観で、「予測する」のではなく「コントロールする」という思考です。不確実の高い状況下では、その時々の状況に応じて、パイロットのように方向を調整していくことが肝になる、ということでしょう。
固定概念にとらわれず、「水の如く」柔軟に対応できるかどうか、今日の状況によって、昨日まで考えていたことをすぐに変えることができるか。これらの考え方は、大企業・大手企業よりも柔軟な意思決定を即座に行うことができる中小企業・小規模事業者に適したものではないでしょうか。
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