■その十一 ヨーロッパ旅行と絵画
昭和52年の初夏、池波正太郎は初の海外旅行でフランスの各地を訪れました。少年の頃からフランス映画の大ファンで、日本で上映されたフランス映画のほとんどを観ていた池波には、フランス・パリの街並みがしっかりと頭の中にあったようです。同行者が驚くほどパリの住人のように皆を引率して歩いて行きました。以後、5回に渡るヨーロッパ旅行でフランスを中心に、イタリア、スペイン、ベルギー、ドイツを旅しました。最初のフランス旅行から帰った後、「あの国の風光を見てくると、どうしても描かずにはいられなくなる。実に、ふしぎだ」と、にわかに絵を描くようになります。少年の頃には、鏑木清方画伯の弟子になり、挿絵画家になる夢を抱いていたようで、眠っていた絵心が目覚めたのでしょう。そして紀行エッセイとともに、旅先で観た風景や街角で出会った人びとを水彩画に描くようになりました。その後も執筆の合間の、気分転換にはもってこい、というわけで数多くの絵を描き、画文集や作品の挿画やカット画として発表するようになります。池波正太郎記念文庫には約500枚の原画が残されています。
問合せ:中央図書館池波正太郎記念文庫
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