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新春座談会2025 あけましておめでとうございます(2)

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東京都品川区

○これからは個性活躍の時代 性別や障がいの有無にとらわれないダイバーシティな土壌づくりを
区長:女性リーダー3人が集まっているということで、まずは共通するテーマからお話しさせてください。品川区は昨年の4月に「品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例」*1を制定しました。その中では、女性のエンパワーメント*2を基本的な考え方の一つに入れています。いわゆる「女性活躍」ではなくて、一人ひとりが持つ力を十分に発揮できるように後押ししていくことが重要だと思っています。そうした意味で、女性のエンパワーメントについてどう考えていらっしゃるのかお伺いします。
鳥取:私が社長に就いた時に、くり返し「女性社長」という言われ方をしました。長く客室乗務員の職にありましたので、客室乗務員から社長になるという経歴がちょっと珍しかったのかもしれませんが、いつまでも言われることに正直とても驚きました。自分の中では、「女性活躍」という言葉すら古いと思っていまして、活躍できる人材に性別も、障がいの有無も関係ないと思っています。
及川:同感です。限られた数の社員の方たちにフルに活躍してもらうためには、性別なんて言っていられません。ですから女性活躍の先にある、個性活躍を重視してきました。性別とか年齢とか出身校とか、そういうことによらない「自分の個性」で活躍する人です。しかし、その個性活躍の機会が与えられない人の一番の集団が女性だったのかもしれません。半数いる女性がチャンスをつかむためには、まずはトップの意思、そしてジェンダーを取り巻くバイアスの除去、ライフステージの壁といったものを順番にクリアして、最後に女性の意識、エンパワーメントを高めていくことが大切だと思います。
区長:大事な考え方ですね。
鳥取:私が長く籍を置いていた客室乗務員の世界は、女性が多数を占めます。管理職もほぼ女性ですし、キャリアプランはある程度描きやすいのですが、一方、他の組織ではキャリアプランを描きにくいと感じる女性社員も多い。これは大きな課題だと思っています。ライフイベント*3から戻ってきて復帰しやすい環境づくりなどに本気で取り組んでいますが、その一方で、女性自身も責任が重い仕事や昇進に尻込みしてしまったり、自信が持てずにあきらめてしまったりするケースがあります。そうしたことも含めて、当社では、女性が自信を持って活躍できる土壌づくりを進めているところです。
区長:伺っているとやはり、女性リーダーだからこそ、見えてくるものや発想があるように感じます。区政でもプロジェクトや計画を立てる時に、審議会を組織したり、有識者や区民の方に集まっていただいたりするのですが、時にその構成に偏りがあることに気づきます。例えば出席者が男性ばかりだったり、あるいはイベントで登壇する大半が男性だったり。ですので、区としては多様な意見を反映させるためのバランスの指標として、構成メンバーをどちらかの性が40%になるようにという数字を目標にしています。
鳥取:そうしたことに気づくのは、女性リーダーだからかもしれませんね。
区長:悪気があるわけではなくて、気づいていない。そういうことが様々な場面であると感じています。言い続ける、問いかけ続けることで、みんなが「なんかちょっとおかしいな」と感じるようになっていくことが必要だと思っています。
及川:先ほど鳥取さんが「女性社長」と呼ばれて珍しがられたとお話しされましたが、私も同じ経験をしました。ポーラは主に女性向けの化粧品を扱っている会社なのになぜ?と思いつつ、こんなに珍しがられるということは、それだけチャンスとチャレンジの機会が女性にはなかったのだと感じました。私たち女性リーダーができること。それは、その判断軸はちょっと偏っていませんか、あるいは男性だから、女性だからというバイアスを取り払ってみませんか、という話を一つひとつ丁寧にしていくことだと思います。
区長:女性のエンパワーメントを高めるために必要なのは、まずはジェンダーバイアス*4を取り払うことと言えるでしょうか。
及川:女性をリーダーに登用することは、下駄(げた)を履かせることではなくて、今までかけていた色眼鏡をとってくださいということではないでしょうか。色眼鏡をとってみれば、優秀な人材がたくさんいます。その人材を育て、素敵な女性リーダーたちがいることを発信していくとともに、どこでも人を育てる土壌をつくることができると言い続けていくことが大切です。
鳥取:私は性別ではなく、個人の力が尊重されるべきだと言ってきました。しかし、管理職になることを躊躇(ちゅうちょ)して歩みを止めてしまう女性たちがいることも事実。私のことを見て「やってみようかな」「私にもできるかもしれない」と思ってくれる女性が一人でも増えてくれるように行動していきたいと思っています。「社長になりたい」という女性が出てきてくれたら最高ですね。

*1 品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例
すべての人が性別や性的指向、ジェンダーアイデンティティにかかわらず、誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指し、ジェンダー平等と性の多様性尊重の視点に基づき、区の施策を総合的かつ計画的に推進していくための基本理念などを定めた条例(令和6〔2024〕年4月1日施行)。
*2 女性のエンパワーメント
女性が尊厳と誇りを持って自分自身の生活と人生を決定する権利を保障し、あらゆる参画の機会において、女性個人が持つ力を十分に発揮できること。
*3 ライフイベント
生涯の中で迎える可能性があるイベントのことで、就学、就職、転職、結婚、出産、介護、住宅購入などが該当する。
*4 ジェンダーバイアス
性別の違いで特定の役割や行動などに思い込みや偏見を無意識に持つこと。色は性別と本来関係ないはずなのに、「女性はピンク」「男性は青」といった、イメージを抱くことも当てはまる。ジェンダーバイアスの度合いを測る指標のひとつとして、ジェンダーギャップ指数がある。

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