すみだを愛し、すみだで活躍する人をリレー形式で紹介する「つながる すみだ人」。お話を伺った方に次の方を紹介していただき、すみだを愛する人をつないでいきます。第60回は、古書がずらりと並ぶ「LE PETIT PARISIEN(ル プチ パリジャン)」(東向島二丁目14番12号)を運営する石川 順一さんです。
Q.すみだでどのような活動をしていますか?
なかなか言葉で言い表しにくいのですが、あえて言うと「オープンな書斎」の運営です。ここには、私が学生時代から収集してきた古書が並んでいます。一番古い本は1,400年代後半のもの(上の写真で持っている本)。ぜひ手に取って、ページをめくったり、観察したりしてください。一部を除き、本の販売はしていません。飲物は希望があれば提供していますが、カフェでもありません。だから“書斎”と呼んでいます。
もともと読み物としての本が好きで、次第に本の印刷・装丁や、その背景にある歴史、そして本の所有者を示す役割を持つ蔵書票へと興味が広がっていき、現在も研究中です。来館者にはその方の関心に応じてご説明しています。現在私が一番関心を持っているのは蔵書票ですが、来館者にはそれぞれの楽しみ方で過ごしてほしいです。
Q.現在の活動を始めたきっかけは何ですか?
「これまで個人的に収集してきた古書を、ほかの方たちにも見ていただきたい。自分で楽しむだけではもったいない。」この想(おも)いが一番のきっかけです。来館者の中には、劣化を恐れて素手で本を触るのをためらう方がいますが、劣化してもいいんです。本はモノなので、もともと劣化するもの。「どんな表紙?どんな紙?厚みは?」眺めるだけではなく実際に手に取ってもらい、その人の記憶に残ることの方が重要だと思っています。これは美術館などの組織ではなかなか難しく、個人だからできることではないかと思います。
現在私たちが“本”と認識するものは、西洋が起源です。そして、本の内側には所有者を示す蔵書票が貼られていました。本は一部の例外を除き、18世紀頃まで貴族などしか持てない高価なもの。まさに資産だったため、当時の蔵書票は“所有権を誇示する”ものでもあったと考えています。
現代の蔵書票はデザイン性が高く、美術の側面から注目されることが多いですが、本来は何なのかはあまり知られていません。それがときどきもどかしく、デザインの美しさの前提にある蔵書票の歴史なども知ってもらいたいなと思って、説明にはつい力が入ります。
Q.石川さんは、すみだのどんなところが好きですか?
実はすみだには縁もゆかりもありませんが、拠点をここに決める過程で、すみだの歴史や文化に関心があったことに気付きました。例えば、永井 荷風や吉行 淳之介の描いた世界です。
あとは、日本ならではの四季を感じられる場所として、向島百花園が好きですね。四季それぞれの魅力があり、新緑はもちろんですが、冬枯れの趣ある様子も素敵だと思います。
どちらも蔵書票です。左は名前はなく、紋章のみが入っています。紋章は1人ずつ異なるので、個人の所有であることを証明するのに役立ちました。右はエリザベスII世の子ども時代のものです。
「LE PETIT PARISIEN」は、水曜日・木曜日を除く午後1時から6時に開いています(臨時休業あり)。夜は不定休なので、事前に電話でお問い合わせください(【電話】03-3612-9961)。
◆次回登場してくださるのは…
和装を仕立てる「仕立直や」を営みながら、和装の販売やワークショップなどを行う「ワモノと雑貨キセカエ」を運営する坂田 直さんです。
問い合わせ:広報広聴担当
【電話】03-5608-6223
◆私の好きなすみだ
◇今月の1枚
「旧中川水辺公園」
撮影:小木曽 清三さん
本コーナーへの写真を随時募集しています。詳細はこちらをご覧ください。
問い合わせ:広報広聴担当
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