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「市長コラム」多摩の風 第112回

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東京都多摩市

■蘇った黒澤明監督の「生きる」
黒澤明監督の不朽の名作「生きる」のリメイク版がノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの脚本により、第二次世界大戦後の英国を舞台に蘇りました。
どのように描かれたのか、無類の映画好きの私としては、矢も楯もたまらず、映画館へ。
1952年に映画化された黒澤監督の「生きる」は、志村喬演じる市役所の市民課長が主人公。30年無欠勤でとにかく真面目だけが取りえの公務員。
机上は稟議と書類の山。黙々とはんこを押すだけの日々。各課のたらいまわしも日常茶飯事。まさにお役所仕事。ところが、ある日、病院で病魔に蝕まれ死期が近いことを知る…。
カズオ・イシグロはノーベル賞受賞講演で大の映画好きを告白していました。また、子どもの頃、英国のテレビで「生きる」を観て大きな衝撃を受け、ご自身の成長に影響を及ぼしたとの話を、今回知りました。
リメイク版で、英国紳士然としている俳優のビル・ナイは、ロンドン市役所の市民課長を実直にコミカルに演じています。余命を知り、生の呪縛から解き放たれ、最期の人生を自分の力で切り開こうと動き出します。
全編違和感なく引き込まれるように視聴しました。第95回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされたビル・ナイと、脚色賞にノミネートされたカズオ・イシグロによって、見事に黒澤映画の世界が描写されています。私も、小さい大きいではなく先送りせず、魂のこもった仕事をしたい、そう思いました。

(多摩市長 阿部裕行)

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