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〈新春対談〉多摩市長 阿部裕行×日本アニメーション株式会社 代表取締役社長 石川和子(2)

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東京都多摩市

■アニメには無限の力がある

《阿部》新年あけましておめでとうございます。本日は、多摩市和田にある日本アニメーションのスタジオを訪問し、代表取締役社長の石川和子さんからとっておきのお話などをお聞きしたいと思います。市民の皆さん、ご存じでしょうか。「フランダースの犬」「赤毛のアン」そして「あらいぐまラスカル」などの「世界名作劇場」シリーズ(以下、「世界名作劇場」)やさくらももこさんの「ちびまる子ちゃん」を制作しているスタジオが実は多摩市にあります。本年は日本アニメーション創業50周年の年と伺っています。その記念すべき年の始まりに石川社長から一言お願いします。

《石川》あけましておめでとうございます。1975年に創業された当社は、2025年6月に創業50周年を迎えます。当社の作品を見ていただいて、愛してくださるファンの皆さんはもちろん、温かく見守ってくださった多摩市の皆さんには心より感謝しております。創業50周年という節目を、「これまで」と「これから」を社員みんなでしっかりと結ぶ機会にして、ここまで歩んでこられたことへの「感謝」をカタチにしていきたいと思っています。

《阿部》日本アニメーションのスタジオは多摩第二小学校の傍にあるんですよ。最初に知った時は本当に私もビックリしました。多摩市で創業された本橋浩一前社長は石川社長にとってはお父様にもなられますが、どのような方だったのですか。

《石川》創業者の本橋浩一が亡くなってから十数年が経ちます。父はクリエイティブ面ではなく、ビジネス面でのプロデューサーでした。「アニメとは作るだけではなく、それからビジネスが始まる」という考えから、いつまでも残る、世界で通用する作品作りを心掛けていました。さまざまな作品を残してくれた父は、先見の明があったと思います。「世界名作劇場」の制作にあたっては、舞台となっている国はもちろん、世界中の方に見ていただける作品になるよう作っているんです。

《阿部》本橋前社長が手掛けた「フランダースの犬」や「赤毛のアン」などの作品が日本の子どもたちだけでなく、世界の子どもから大人まで楽しんでいるというのは、素晴らしい光景です。

《石川》「世界名作劇場」は、舞台となっている所まで取材に行き、風景だけではなく、お祭りや食生活などまでを丁寧に描写することによって誰が見ても違和感がないようなリアルさを作れていると思っています。

《阿部》日本アニメーションで、創業から今の世代の方まで大切に受け継がれているものはどんなことでしょうか?

《石川》父は「アニメは子どものためにある」とよく言っていました。その言葉には、アニメを通して子どもたちの心を豊かにしていきたいという想いが込められています。アニメでは主人公が体験していることを、見ている人も自分が主人公になって体験することができます。その体験によって新しい価値観を自分の中に得ることができ、感情を豊かにすることができます。そして今後の人生を拡げていくということにつなげられると思っています。

《阿部》1979年放送の「赤毛のアン」は石川社長の思い入れの強い作品だと伺っております。

《石川》「赤毛のアン」は本当に素晴らしい作品だと思っています。魅力の1つは、視聴者自身が成長するにつれて視点が変わることで、どの年代でも共感できる物語であることです。放送当時に見た際には溌剌としたアンの姿に憧れていましたが、親になってから見ると、マシュウやマリラの想いが痛いほどよく分かるようになりました。子どもはもちろん、大人になった今だからこそもう一度見て欲しい作品です。世代を超えて楽しんでいただくことができる作品なんです。

《阿部》「赤4毛のアン」はカナダの小説家モンゴメリの作品ですが、舞台はプリンスエドワード島。孤児院から来るのは男の子だと思っていたら女の子のアン・シャーリーが来たというのが話の始まり。日本でいえば明治時代の頃の作品ですね。アニメ内の時代背景などは当時のものを参考にされていると思いますが、「赤毛のアン」は子どもたち、そして子育てをしている親世代にとっても今なお色褪せない魅力があります。作中で流れている音楽も印象的ですよね。

《石川》作中で流れていた音楽を聞くといつでも作品の世界に戻ることができます。「赤毛のアン」の主題歌「きこえるかしら」「さめない夢」は現代音楽界の巨匠、三善晃さんが作曲しており、劇中のBGMなどは毛利蔵人さんが担当されました。
「赤毛のアン」をはじめとして「世界名作劇場」はどの作品も音楽が素晴らしいので、「コンサートをしてみたい」という夢を持っていました。それで、スタッフと考えながら「まずは赤毛のアンからはじめよう」ということで2023年11月に、再編集したアニメ映像を大きな画面に流しながらフルオーケストラでコンサートをさせていただき、放送から45年以上経っている作品ですがチケットは完売!お客様にも感動していただくことができ、本当にやってよかったと思っています。2025年も開催する予定ですので、皆さんにも音楽で「赤毛のアン」の世界を堪能していただきたいです。

《阿部》「赤毛のアン」には、多摩市にとってもゆかりのあるアニメーターたちが関わっているそうですが、思い出を教えていただけますか?

《石川》「赤毛のアン」は後にスタジオジブリで「平成狸合戦ぽんぽこ」を制作した高畑勲さんや、「耳をすませば」の監督となった近藤喜文さんが当社在籍時に参加された作品です。高畑さんが監督され、近藤さんがキャラクターデザインを担当されました。シリーズなので、毎週完成したアニメを納品していたのですが、高畑さんがあまりにこだわりすぎて、放送直前にフィルムを納品したこともあるのだとか。夜の間もずっと仕事をして、こだわってこだわってこだわって作り込んで、朝に駆け込んで納品したこともあったそうです。

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