大島の自然や文化、身近な魅力に迫ります。
■正月モシキと火換え(ヒガエ)
早いもので2024年も残すところ1ヶ月となりました。「師走は、普段落ち着いている人でも、走り回るほど忙しい」などと言われるように、年の瀬は大島の人々も慌ただしく過ごされてきたようです。女性たちは12月に入ると普段の仕事を大急ぎで片付け、中旬以降「正月モシキ(正月用の薪)」の準備や牛用のスゲの草刈りに専念していました。この正月モシキは、新年を迎える準備の中でも特に重要なものと位置づけられていました。女性たちは天気の良い日は毎日のように薪を集めに山へ向かい、大きな束を頭にささいで運んでいました。列になって女性が山を下りてくる姿は、年の瀬が迫る大島ならではの光景でした。
大掃除や門松の準備を終えて大晦日を迎えると、それまで使っていた火を一度消し、囲炉裏を丁寧に清掃して、正月モシキを使って新しい火をつける「火換え(ヒガエ)」が行われていました。新しい火は、大晦日から昼夜を問わず三が日まで燃やしつづけ、火種が消えぬよう管理するのも、女性の大切なお仕事でした。これは、一家の生活が絶えることなく続くようにとの願いがかけられているそうです。現代では囲炉裏を持つご家庭は少ないかと思いますが、大掃除やお正月の準備として家を整え、翌年への希望を胸に家族で年越しを迎えるのは、昔も今も変わらないのかもしれませんね。
〔伊豆大島ジオパーク推進委員会事務局〕
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