■不合理な税制改正等に対する特別区の主張
法人住民税の一部国税化や地方消費税の清算基準の見直し、ふるさと納税制度等の不合理な税制改正によって、特別区は貴重な税源を奪われ続けています。しかし、特別区には、首都圏特有の財政需要があり、将来にわたって膨大な額の財源が必要です。さらに、長引く物価高騰の影響は、特別区の財政にも大きな影響を与えており、先行きが依然として不透明な状況です。
地方財源の不足や地域間の税収格差の是正は、地方の財源を吸い上げることなく、国の責任において地方交付税の法定率を引き上げ、調整するべきものであり、自治体間に不要な対立を生むような措置は是正されなければなりません。
(1)不合理な税制改正による影響は深刻
特別区への影響額は、令和6年度で約3,200億円、平成27年度からの累計で約1兆9,000億円にもなり、「東京は財源に余裕がある」等の一方的な見方によって、税金が国に奪われています。これは、応益負担や負担分任という地方税の本旨を無視したものです。
(2)ふるさと納税制度は廃止を含め抜本的な見直しが必要
令和6年度の特別区における住民税の減収額は、特別区全体で約930億円となり、これは特別区民税の10%に迫る規模となっています。また、平成27年度からの累計額は、4,500億円を超えました。ふるさと納税制度は、地方自治体の行政サービスに要する経費を地域の住民が負担し合う住民税の在り方を逸脱し、地方自治の根幹を破壊するものです。今こそ、制度を巡るさまざまな問題に対処すべく廃止を含めた抜本的な見直しを行うべきです。
(3)東京の地方財源が突出しているわけではない
人口1人当たりの地方税収の格差是正のため、地方税の見直しが必要との見方がありますが、地方税に地方交付税等を合わせた人口1人当たりの地方財源を他の道府県と比較すると、東京が突出して多いわけではありません。今後も膨大な財政需要への対応が不可欠な中、東京一極集中を理由とした、偏在是正措置については、決して容認することはできません。
(4)今後も多くの財源が必要
特別区は高齢者の急増や首都直下地震等の自然災害への備え、膨大な公共施設の改築需要への対応をはじめ、今後も多くの財源が必要です。
(5)地方税財源の拡充こそ地方分権のあるべき姿
国の責任により地方税財源総体を拡充し、自治体が責任をもって役割を果たすことこそが地方分権の本来の姿です。今後も、地方税財源の充実・確保、不合理な税制の是正を国に求めていきます。
※詳しくは、特別区長会ホームページ「不合理な税制改正等に対する特別区の主張(令和6年度版)」(【HP】https://www.tokyo23city-kuchokai.jp/katsudo/shucho.html)をご覧ください。
▼ふるさと納税の新宿区への影響
ふるさと納税制度は、ふるさとや地域団体のさまざまな取り組みを応援する気持ちを形にする仕組みとして、平成20年度に導入されました。ふるさと納税の影響により、新宿区の特別区民税の減収額は増加し続けており、令和5年度は約39億円(学校給食費無償化に必要な経費の約3年分)、累計額は約184億円となっています。地方交付税制度では、ふるさと納税により減収があった交付団体には、補填される仕組みとなっていますが、不交付団体である特別区は補填されず、ふるさと納税による減収額は行政サービスの低下につながります。また、返礼品代や仲介業者への手数料が寄附額の約半分を占めるため、行政サービスに使える経費は、残りの半分程度となってしまうことも問題です。区は、今後とも特別区長会を通じてふるさと納税制度の改善を求めていきます。
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