■人助けの気持ちが人権擁護活動を支える原動力
◇長く人権擁護委員として活動されている皆さん。どんな思いが原動力となっているのですか?
吉橋:性格的に、困っている人を助けたいという気持ちが強く、だからこそ青少年委員や民生委員・児童委員などさまざまな活動を経験してきました。そんな中でも人権擁護委員は特に緊張感の大きな任務だと感じます。大変な面もあるけれど、わらにもすがる気持ちで相談してきてくれた方の役に少しでも立ちたいという思いがあるから、これまで続けてくることができました。人権擁護委員を経験して、人助けをしたい気持ちはより強くなったように感じます。
安部:私は弁護士であり、そもそも弁護士の使命として「基本的人権の擁護」がありますから、それを実践できる貴重なポジションが人権擁護委員だと思いますし、そこに少しでも寄与できるのであれば喜んで貢献したい。そんな気持ちが根底にあります。
横山:私の原点はやはり子どもたちの存在です。長く教員をやってきて、子どもたちの置かれた環境の格差というものを目の当たりにしてきました。学校の人権教室で「人権とは何か」を考えてもらうときに、「きれいな水が飲めること」「ごはんを満足に食べられること」「不自由なく勉強ができること」などと伝えていますが、遠足で満足なお弁当を持ってこられない子、最低限の学用品を用意できない子…。当たり前の権利が保障されていない子もいます。教員生活の中では、人権について考えさせられるシーンが何度もあり、社会的弱者である子どもたちをなんとかしてあげたいとずっと思い続けてきました。そのような子どもたちがいることを、社会に知らせたい思いもあります。
吉橋:私は「こどもたちの人権メッセージ発表会」を担当していますが、家族に障害者あるいは高齢者がいる子どもたちが、自分自身の体験として話す発表は、特に胸に迫るものがあります。一方で、当事者でない子どもたちも、人権教室を終えるとすごく清らかな表情になるのが印象深くて。私たちの活動が、1人でも多くの子にとって人権について考えるきっかけになるといいなと願っています。
安部:子どもの頃からしっかりと人権教育するのは本当に大切で、ぜひ杉並区も今以上に力を入れてほしいと思います。
■差別のない、思いやりあふれる杉並に
◇人権が守られる社会とまちづくりのために、一人一人がどのような意識を持つのが大切だと考えますか?
横山:障害者・外国人・貧困・性的マイノリティーなど…。さまざまな差別がまだまだあります。このまちに暮らす一人一人がそういった差別に目を向け、改めて考えていくことが大切ではないでしょうか。差別が少しでも減っていく、そんな杉並であってほしいです。
吉橋:相手の立場になって考えること。それが優しさにつながります。地域のつながりも大切だと私は思っていて、ほんの少しでもお隣さんやご近所さんを気にかけて、助け合えるといいですよね。「お互い様」が行き交うまちは素敵です。
安部:以前、人権パネル展で「其(そ)れ恕(じょ)か」という言葉を目にしました。後で意味を調べるとそれは孔子の言葉で、人間が生きていくうえで一番大切なことは何かと問われた際に、孔子は「恕=思いやり」だと答えたそうです。人権を一言で表すなら、まさに「思いやり」ではないでしょうか。思いやりをみんなが大切にすることで、人権が大切にされるまちが育っていくのだと思います。
※「吉橋」の「橋」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
■人権相談を受け付けています!
いじめ・差別など、さまざまな人権問題について、人権擁護委員が相談を受け付けています。
日時:毎月第4金曜日、午後1時~4時
(受け付けは3時まで。祝日、年末年始を除く)
場所:相談室(区役所西棟2階)
問合せ:区政相談課
12月4日~10日は「人権週間」です本紙8・9面へ
■人権擁護委員とは?
人権擁護委員とは、地域の中で人権尊重思想を広め、住民の人権が侵害されないように配慮し、人権を擁護していくことが望ましいという考えから創設された民間のボランティアです。
さまざまな分野の方が、法務大臣から委嘱を受け、区内では13名の委員が人権相談・啓発活動などを行っています。
■プロフィール:
◇安部陽一郎(あべ・よういちろう)
昭和32年生まれ。弁護士の仕事と並行して、平成12年11月から人権擁護委員の活動を開始。平成30年5月~令和2年6月東京人権擁護委員協議会会長を務める
◇吉橋正美(よしはし・まさみ)
昭和26年生まれ。杉並区教育委員会青少年委員、青少年委員協議会会長などを務め、人権擁護委員に着任
◇横山正(よこやま・ただし)
昭和22年生まれ。和田小学校校長を定年退職後、人権擁護委員に着任。東京人権擁護委員協議会杉並地区委員会代表を務める
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