◇振り返ったときに変化を感じられる彫金家人生を
─長く彫金を続けてきたその原動力は何だと思いますか?
根幹には当然「これしかできない」という思いもあるし、「この仕事は誰もができることではない」という思いもあります。伝統工芸という世界に長く身を置いている限り、プライドを持たなければ仕事としては続けられないので、それが原動力の一つであることは確かです。一方でプライドだけでなく、お客さんに作品を求められ、喜んでもらうことが次へのモチベーションにもなっています。彫金技術に終わりはないので、続けている間はずっと追求し続けていくでしょう。ただ、彫金を始めた頃などの過去の作品が今よりも劣っているかというと、そうとも言えないのが不思議なものです。後で作品を振り返ると、そのときの自分にしか作れなかったのだなと感じられるから面白いなと思います。
─彫金家としてのこれからをどのように思い描きますか?
彫金家というのは、ある日突然イノベーションが起きて何かが変わるという仕事ではないので、長く続けていく中でふと振り返ったときに、こんな風に変わってきたんだなと感じられればいいのかなと思います。今は亡き職人たちの作品が今でも私たちを楽しませてくれているように、たとえ伝統そのものが途絶えても、作品は残っていく。そのことを忘れずに、今後も彫金と向き合い続けていければと思います。
■YouTubeで配信中!すぎなみビトMOVIE
すぎなみビト「小川真之助さん」のインタビュー動画を、本紙2次元コードからご覧いただけます。
「杉並区公式チャンネル」で検索
<この記事についてアンケートにご協力ください。>