■「百寿者」
平成の初頭、長寿日本一であった沖縄県の百寿者(100歳以上の方)に対する調査に参加した時の話です。最初に健診した80代後半の女性の両足はひどく浮腫み、尿糖も強陽性、聴診器をあてると軽くない心臓弁膜症の雑音に新米医師の私は一瞬で緊張を強いられました。一方、彼女は私の“体調はいかがですか?”の問診に笑顔で一言「上等です」と。続けて「糖尿病で医者にご飯を減らせと言われたので、その分パン食べとります」?「珈琲も砂糖を蜂蜜に代えて」?とご自分の工夫を語りました。医師の説明不足から生ずる笑えない誤解への初遭遇に戸惑う間も無く、彼女は満面の笑みで「まだ自分の食べる分くらいの畑はします」と。「病気があっても、明るく、工夫して身体を動かし続けて生きる」彼女の姿勢は、私には今に続くインパクトとなっています。栄養状態と医療技術・介護の発達により百寿者は急増し、2010年の国勢調査では2,700人に1人の割合で存在します。百寿者は人生の大半を自立して生活し、健康寿命も長いようです。市内でも百寿者は少なくない印象で、私も3人の患者さんの往診経験があります。皆さん明るい気質で、その家で最も日当たりと風通しが良く、家族の集う居間等に近い部屋を自室にされています。30年前の「長老者は家族の宝物」との教授の言葉を思い出します。毎日を活動的に、食事は適正に、家族と明るく暮らすことが百寿者へ続く道でしょうか。
東村山市医師会
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