■未来の江戸川区のために「アクションプラン」を策定
このように本区では、2100年を見据えた取り組みを進めているところですが、その目指す姿を9千人に上る区民の皆さまの声とともに描いたのが、令和4年8月に策定した「共生社会ビジョン」です。そしてこのたび、その理念を実現するための取り組みを「アクションプラン」として取りまとめました。
このアクションプランには、2100年にかけて人口が減少し財政規模が縮小すると見込まれる中、未来のために取り組むべき施策の方向性がまとめられています。中には、今を生きる私たちにとって耳の痛い話もあるかもしれません。しかし、そこから目を背けていては皆さまと作り上げたビジョンを実現することはできません。
アクションプラン策定の過程では、2度にわたって意見募集を行い、多くの方からご意見をいただきましたが、その中で区内40代の方から次のようなコメントをいただきました。
「なんとなく、今のまま逃げ切れればいいかなと思いながら暮らしている自分に刺さる提言でした。慣れ親しんだまちでこれからも長く暮らしていきたいので、もっと関心を持って行動していきたいと思いました」
この「逃げ切れればいい」という言葉は、もしかしたら私たちの心の奥底にある本音を言い表しているものかもしれません。しかし、「自分たちさえよければ」と見て見ぬふりをし、このまま成り行きに任せていては明るい未来を見いだしていくことはできません。今を生きる私たちには、この住みよい江戸川区を未来の世代へとしっかりと引き継いでいく責務があります。
■区民の声を形にふるさと納税制度を活用
今後はいよいよ、このアクションプランの方向性に沿って区民の皆さまの声をお聴きしながら行動に移していく段階に移ります。
その試みの一つとして、8月下旬、「区民と区職員による政策提案プレゼンテーション」を開催しました。これは、区民の皆さまや区の若手職員から政策の提案を募り、実際にプレゼンテーションを行っていただくというものです。
この取り組みには、小学4年生から80代の方まで、子育て中の方や留学生、障害のある方など、合計32グループ、103人のさまざまな立場の方にご参加いただきました。
当日の様子はライブ配信を行いましたが、環境・防災・子育て・教育・魅力発信など幅広い分野についてご提案をいただき、今すぐに実行できそうなものから、これまで区では発想の無かった新しい視点でのご提案まで、多様なアイデアをお寄せいただきました。
今後は区民の皆さまの声をお聴きしながら、頂いたご提案を形にしていきたいと考えています。そこで、その実現のための手段としてふるさと納税の仕組みを活用してまいります。
ふるさと納税による区民税の流出額の影響は深刻で、23区全体の令和5年度の流出額は、過去最高の828億円になると見込まれています。本区においてもその額は年々増加しており、令和5年度は30億円に迫る額となっています。
区は以前より、ふるさと納税の過剰な返礼品競争には反対の立場をとってきましたが、今回の取り組みでは、制度本来の趣旨を踏まえ、返礼品無しの「ふるさと納税型クラウドファンディング」を導入します。
まず、区民の皆さまから頂いたご提案について、目標額を設定の上、実現のための寄付を募ります。その結果、目標に届いたものについては事業化して実施していきたいと考えています。
まさに、区民の皆さまの声を区民の皆さまの想いで形にしていく取り組みです。新たな区政参画の仕組みとしてチャレンジしてまいります。
■わくわくするような本の世界へ「魔法の文学館」がオープン
さて、来たる11月3日、いよいよ「魔法の文学館」がオープンします。
児童文学界のノーベル賞ともいわれる国際アンデルセン賞を受賞した角野栄子さんの文学館であり、世界的な建築家・隈研吾さんが設計を手掛けた建物とあって、すでに多くの注目が集まっているところです。10月には区民限定の先行内覧会や記念イベントが開催され、角野さんの代表作をまとったラッピングバスが最寄りを走るなど、オープンに向けた期待感も盛り上がりを見せてきます。ぜひ多くの方にお越しいただき、わくわくするような魔法の世界に触れていただければと思っています。
将来に向けてにぎわいの広がるこのエリアをはじめ、区内各地域において地域ごとの「江戸川区らしさ」を大切にしながら、今後も多くの方に「訪れたい」「住んでみたい」と思っていただけるよう、区民の皆さま、区議会議員の皆さまとともに、区の魅力の創造・発信に努めてまいります。ご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。
■透明性の高い区政運営を
最後になりますが、区はこれまで申し上げてきたような皆さまに喜んでいただく施策の発信だけでなく、良くない内容の発信も行っていく姿勢であります。
今年6月に公表しております、生活保護受給者の死亡後の対応を区職員が行わないまま、2カ月半経過していた件につきましては、亡くなられた方のみならず、多大なご心配とご迷惑をおかけしました関係者の皆さまに、深くおわび申し上げます。本件はあってはならない事案であり、あらためて亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
またその後も、生活保護費の支給における不適正な処理や、児童相談所での措置費の算定における誤りが判明し、区民の皆さまの信頼を損ねてしまったことを、重ねておわび申し上げます。
そのうち、生活保護の件に関しては現在、有識者などにより構成される委員会において、事案の検証および再発防止対策の検討が行われているところです。委員会での議論を踏まえ、生活保護業務の適正化と信頼回復に取り組んでまいります。
さて、本定例会にお諮りしております令和4年度の一般会計決算につきましては、令和3年度に比べ、新型コロナウイルス感染症対策経費の減少により、歳出の総額は前年度比97億円減の3185億円となりました。
一方で、景気の順調な回復を背景に、歳入の多くを占める財政調整交付金、特別区税は、ともに過去最高額となっています。
社会・経済がコロナ禍からの回復を見せ、区政も平時に戻りつつある中、本区は今後も堅実な財政運営に努め、健全財政を堅持してまいります。
また、今回提案いたします補正予算でありますが、先ほど申し上げた案件をはじめ、一般会計、特別会計合わせて総額は57億7千万円余であります。
本定例会にはこれら補正予算に加え、「ともに生きるまちを目指す条例」に関連する四つの条例の新設など、合計で21件の議案をお諮りしています。さらに、決算の認定など5件の報告事項もございます。それぞれご審議の上、ご決定いただきたいと存じます。
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