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季節の風情を味わい、興を添える芸者の和芸。(1)

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東京都渋谷区

―花柳界(かりゅうかい)の枠を超え、和の魅力を伝え続けたい。―

■しぶや区ニュース×渋谷のラジオ 渋谷のラジオで出張インタビュー
円山町(まるやまちょう)で芸者として活動する、瓢屋小糸さんと喜利家鈴子さんに、円山町花柳界の歴史や和芸の魅力、日々の稽古の様子について伺いました。

・芸者、円山町花柳界 瓢屋小糸(ひさごやこいと)さん
「これからもお稽古を続けて、自由気ままに芸事を楽しんでいきたいと思います。」
東京都目黒区出身。6歳から三味線を始め、20歳で芸者に。五反田、浜町、神田、神楽坂の花柳界をわたり、昭和50年ごろより円山町花柳界に在籍。現役でお座敷に立ち、踊り手である喜利家鈴子さんとともに、弾き手・唄い手として三味線や小唄で円山町を盛り上げている。

・芸者、円山町花柳界 喜利家鈴子(きりやすずこ)さん
「若い人たちにも、ぜひ、和芸や円山町の文化に触れていただきたいです。」
山口県下関市出身。円山町で置屋(芸者が所属し、お座敷に応じて芸者を派遣する業務を行う場所)を営む叔母の関係で芸者を知り、18歳で円山町の花柳界へ。円山町から日本文化が消えることに危機感を覚え、和の文化を伝えるイベント「音姫と太郎の会」を開催。三味線・小唄の瓢屋小糸さんとともにお稽古や、お座敷に精力的に取り組む。

◆時代とともに移り変わる、円山町の花柳界
◇お二人の自己紹介と、芸者になったきっかけについて教えてください。
小糸:瓢屋小糸と申します。94歳になります。6歳の時から和芸のお稽古をしていたのですが、当時、近所に西小山の花柳界があって、芸者をよく見ていたんです。その姿に憧れて、20歳の時に花柳界に入りました。それから74年間、ずっと芸者をしています。

鈴子:喜利家鈴子と申します。叔母が円山町で芸者をやっていて、私が遊びに訪れるようになり、その流れで手伝いを始めたのがきっかけです。18歳で芸者になりました。

◇ずっと芸者を続けてこられた原動力は何だと思いますか?
小糸:芸事が好きだからですね。今まで何十年もこの仕事をしていて、本当にいろいろなことがありましたが、どの時間も楽しかったです。そして、今が一番幸せです。すてきなお客さまもたくさんいますし、こんなにいい仕事はないと思うほどです。

鈴子:三味線、小唄(こうた)、踊りができないと芸者にはなれません。その中で自分の得意なものを選んで、見番(芸者の事務所)の試験を受けて、その土地の芸者になるんです。芸者になってからは、小糸姉さんのそばで、いつまでも一緒にお座敷に立ちたいと思っており、それが原動力となっています。

◇数ある芸事の中で、小糸さんは三味線と小唄、鈴子さんは踊りをそれぞれ選ばれたのはなぜですか?
小糸:三味線と小唄は、思いやりが必要なんです。踊り子さんがどのような感情をもって踊っているかをくみ取り、どのように弾(ひ)けば踊りが引き立つかを常に考え、つつましやかな姿勢で演奏しなければならない。この情緒が、何とも言えない魅力となっているんです。

鈴子:踊りを通して何を伝えるかを、自分の中に落とし込んでいなければ踊ることはできません。唄の詞から心情を読み取り、手先まで使って表現をする。小さな動きほど気を付けていますね。そのような踊りの繊細さに魅力を感じました。

◇現在、円山町の芸者は何人いらっしゃるのでしょうか?
鈴子:4人です。料亭も三長(さんちょう)さんだけになってしまいました。

小糸:4人で頑張っています。

鈴子:円山町の花柳界を残していきたい気持ちもありますが、時代の変化に伴って慣例の宴席がなくなり、お客さまが減ってしまいましたから、後継者は募っていません。残念なことですが、料亭遊びがなくなりつつあるんです。板前さんや仲居さん、畳や漆器の職人さんも減っていきました。

◇円山町の文化を守るために、取り組んでいることはありますか?
鈴子:料亭は私たちの和芸のほか、四季の花、漆器や掛け軸を通して日本の情緒や季節の移り変わりを楽しむための場所でもあるため、敷居が高いと感じてしまう人が多いと思います。でも、これからはお客さまが気軽に料亭に入れるように変えていかなければなりません。より多くの人たちに芸事を身近に感じていただけるよう、初めていらっしゃるお客さまも楽しめるようなプランを用意しています。

小糸:お客さまあっての芸者ですから、時代の変化に合わせて形を変えていかなければならないと思いますね。

鈴子:渋谷はさまざまな年齢層の人たちが集まる活気あふれる街なので、若い人たちにもぜひ、来ていただきたいです。

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