―障がいや世代、国を超えて分かち合う着物の喜び。―
■しぶや区ニュース×渋谷のラジオ 渋谷のラジオで出張インタビュー
S-SAP協定に基づき、着物を通した地域貢献の取り組みを行うう株式会社やまとの皆さんに、活動の背景や思い、着物の魅力について伺いました。
・株式会社やまと 代表取締役社長 矢嶋孝行(やじまたかゆき)さん
「着物の文化が全ての人に寄り添うものであるように。誰もが自由に着物を楽しめる社会を目指しています。」
・株式会社やまと 総務人事部 木村(きむら)さや香(か)さん
「中学校での着付け教室では皆さんが一生懸命に着付けを覚えようとする姿が印象的でした。」
・株式会社やまと ブランドコミュニケーション部 山井茜(やまのいあかね)さん
「ハタチ記念撮影会では「着付けが楽」「夢のよう」などの言葉をいただき、とてもうれしかったです。」
◆無料撮影会、着付け授業に、手拭いや浴衣の制作まで
◇皆さんの自己紹介をお願いします。
矢嶋:代表取締役社長の矢嶋孝行です。株式会社やまとは私の曽祖父が大正6(1917)年に創業した着物専門店で、昭和47(1972)年からは千駄ヶ谷に本社を置いています。北海道から鹿児島県まで店舗を展開しており、19歳から79歳まで約700名が働いています。
木村:総務人事部の木村さや香です。採用や社内研修を主に担当しています。服飾専門学校でファッションを学ぶうちに着物に興味を抱き、やまとに入社しました。今年で20年目になります。
山井:ブランドコミュニケーション部の山井茜です。広報を主に担当しています。祖母の影響で小さいころから着物に興味があったことと、大学時代に外国語を学び異文化に触れる中で着物をはじめとする日本文化の魅力に気付いたことがきっかけとなり、入社しました。
◇令和4(2022)年に渋谷区とS-SAP(シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー)協定を締結された経緯と、官民連携の取り組みについて教えてください。
矢嶋:締結のきっかけは、区の基本構想の未来像である「ちがいをちからに変える街。渋谷区」が、当社が掲げる「『きもの』でエキサイティングな世の中をつくる」という考え方に通じるものがあると感じたことです。私たちは、障がいの有無や家庭環境、年齢などにかかわらず「誰もが当たり前に着物を楽しめる世の中」を目指して、以前から地域貢献活動を行なっていました。しかし、民間企業の力だけでは対象者へのアプローチなど、難しい部分もあったので、区と連携して取り組みたいと考えました。S-SAP協定締結後は、より多くの人にご参加いただけるようになり、取り組みの幅も広がって、官民連携だからこそできることがあると感じています。
山井:これまでの具体的な活動として、「はたちのつどい」(旧新成人を祝う会)の無料撮影会、障がいがある新成人の方々へ向けた無料撮影会「ハタチ記念撮影会」、シブヤフォント※1とコラボレーションしたオリジナルの手拭いや浴衣の制作、原宿外苑中学校での浴衣着付け授業および浴衣デザインコンテスト、渋谷ハチコウ大学での「着物の着付けレッスンとお花のなげいれ体験」などを行なってきました。
※1 渋谷で暮らし・働く障がいのある人と、渋谷で学ぶ学生が共に作り上げた文字や絵柄をフォントやパターンとしてデザインしたパブリックデータ。
◆参加者の笑顔や、豊かな感性が活動の原動力に
◇今年で3回目を迎えた「はたちのつどい」の無料撮影会と「ハタチ記念撮影会」では、参加者からどのような反響がありましたか?
山井:「はたちのつどい」の無料撮影会は、会場内に設置した撮影ブースに列ができるほど大盛況でした。参加者からは「プロのカメラマンに撮影してもらえてうれしかった」「友達と一緒に撮影できてよかった」などの声が聞かれました。皆さんの着物姿も自由で個性にあふれていて、すてきでしたね。「ハタチ記念撮影会」は区内に拠点を置くヘアメイク専⾨店や結婚式場にもご協力いただいているプロジェクトで、当日は当社が開発したユニバーサルデザイン※2の振り袖と袴をご着用いただきました。ご家族からは「着付けが楽で本人も楽しそうでした」「夢のような時間でした」などの言葉をいただき、とてもうれしかったです。
※2 言語や国籍、年齢や性別、障がいの有無などの個人の違いにかかわらず、誰もが利用できることを目指したデザインのこと。
◇シブヤフォントを用いた手拭いや浴衣の制作を通じて、障がいのある人への支援も行われていますね。
矢嶋:当社では、全国各地の産地の個性を引き出す「顔の見えるものづくり」を大切にしているのですが、シブヤフォントもまさにその一つです。渋谷の街をモチーフにしたデザインはどれもかわいいですし、データを活用することで障がいのある人の創作活動や就労をサポートできるという仕組みも素晴らしいと思います。
◇原宿外苑中学校で開催された浴衣の着付け授業や、浴衣デザインコンテストはいかがでしたか?
木村:全校生徒を対象に行なった浴衣の着付け授業は、一人一人が好きな浴衣を選び、スタンダードな女性浴衣の着付けに全員が挑戦しました。私たち社員が講師を務めたのですが、皆さんの一生懸命に着付けを覚える姿が印象的でした。このように子どものころに着物に触れた経験は心に残ると思いますし、この取り組みをきっかけに、着物をはじめとする日本の文化に興味を持ってもらえたらうれしいです。
山井:浴衣デザインコンテストは、中学3年生の美術の授業で浴衣のデザインを描いていただき、一般投票で選ばれた入選作品を商品化するという取り組みです。着物の固定概念に捉われない中学生たちの感性豊かなデザインは見ていて心が躍りますし、私たちも大いに刺激を受けています。
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