11月3日(文化の日)を中心とした1週間は「文化財保護強調週間」として、各地でさまざまな文化財保護事業が行われ、東京都では「東京文化財ウィーク」が行われています。
ここでは、令和6年度に区が新たに指定した文化財と、「東京文化財ウィーク」について紹介します。
■令和6年度港区指定文化財2件が決まりました
ここで紹介する新指定文化財については通常非公開ですが、令和7年1月11日(土)から郷土歴史館で開催する企画展「未来に伝えよう!みなと遺産」展で一部を公開予定です。
□有形文化財[考古資料]
増上寺徳川将軍墓 礫石経(れきせききょう) 4万331点
所有者:宗教法人増上寺
礫石経とは小石に仏教の経典を、1石に1文字、または数文字を墨書したものです。平安時代以降、経塚(きょうづか)や堂塔(どうとう)、墓所等に、経典保存や地鎮、追善供養(ついぜんくよう)等のために埋納されました。
本資料は第二次世界大戦の空襲で多くを焼失した増上寺の徳川将軍墓の改葬に伴い、昭和33~35(1958~60)年に発掘調査が行われた際、9代将軍家重(いえしげ)・12代将軍家慶(いえよし)・14代将軍家茂(いえもち)の墓所から発見されました。縦・横2センチメートル、厚さ1センチメートルほどの方解石製で、記された文字の多くは増上寺の宗派である浄土宗の根本経典の浄土三部経(じょうどさんぶきょう)(阿弥陀経(あみだきょう)・無量寿経(むりょうじゅきょう)・観無量寿経(かんむりょうじゅきょう))と一致しています。
これらの資料は、空襲による焼失を免れた門や燈籠等と同じく、今は失われてしまった徳川将軍家の墓所を構成するものであり、文献資料の記述も少ない徳川将軍家の葬送文化の実態を知ることができる貴重な考古資料です。
□有形民俗文化財
麻布本村町会 麻布氷川祭礼関連資料 17点
所有者:麻布本村町会
麻布本村町会が所有する、麻布氷川神社の祭礼に関連する資料です。江戸後期から昭和初期にかけての資料で、山車(だし)人形2体、高欄(こうらん)2基、飾り幕2枚、木造獅子頭1対、扁額(へんがく)2面、祭礼行列図扁額1面等からなります。
これらは祭礼巡行に用いられていましたが、現在では毎年9月の祭礼の時期に、町会会館に設けられた神酒所(みきしょ)に飾られています。山車人形の素朴なつくりは地域的特色を反映しており、獅子頭の造作は丁寧で力強さが見られます。昭和10(1935)年の祭礼行列図からは、人形山車中心の祭礼から神輿(みこし)の祭礼へと移行する様子や、獅子頭山車の巡行等、昭和初期の様子を知ることができます。
これらの資料は近世から近現代にいたる祭礼の変遷を示すものであり、麻布地域の信仰や民俗を知る上でも重要です。麻布氷川神社の氏子町である麻布本村町内に今日まで大切に伝えられ、現在も祭礼で使用されている点においても貴重な文化財といえます。
◆東京文化財ウィーク
東京都が平成10(1998)年度から実施している「東京文化財ウィーク」は、都内全般で一斉に文化財を公開し、関連する企画事業をあわせて実施するものです。令和6年度も都内各所で貴重な文化財の特別公開や各種事業が行われます。
詳しくは、東京文化財ウィークのHPをご覧ください。
問い合わせ:図書文化財課文化財係
【電話】6450-2869
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