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小池邦夫のうちあけ話(13)

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東京都狛江市

◆海外雄飛 筆墨の故郷・中国で初の交流展
《絵手紙が海を渡った。1991年11月、中国・上海の美術館で海外初となる絵手紙交流展が開かれた》
とりもってくれたのは、僕の友人で水墨画家の杉谷隆志さん。十年来中国の画家らと民間交流を続けてきた人です。筆墨のふるさとで、「詩書画一体」の絵手紙を通して友好の花を咲かせたい――。こんな熱い思いを込めて、中国側と日本絵手紙協会に提案してくれたのです。
中国には「絵手紙」という言葉はありません。中国語で「手紙」はトイレットペーパー。でも、さすがに文字の国ですね。「画信伝友情」と翻訳されました。
不安はありましたよ。なにせ、現地の様子がまったくわからないんですから。ただ、杉谷さんも僕も向こう見ずだから、ぶつかっていったわけです。絵手紙仲間の奮闘のおかげで、会場には畳大からはがきまで、260枚のパネルに貼られた230人の千数百点が並びました。

《500人以上が詰めかけた開会式で、小池さんは「我々は絵手紙の遣唐使です」とあいさつした》
階段まで人で埋まってね、すごい盛り上がりだった。オープニングで、太くて赤いテープをはさみでカットしながら実感したね。日本と中国に橋がかかったんだと。会場の通路の空間に、黄色と黒のロール段ボールで川の流れを作るなどの斬新な会場構成も話題になったな。
中国の出品者はプロの水墨画家だけど、こちらは素人の普段着のままの路線を貫いた。「ヘタでいい、ヘタがいい」の精神でね。これが中国人の心にも響いた。一生懸命かいたヘタさ、情熱をぶつけてかいた力強さが伝わったんだね。

《上海の美術担当の新聞記者が、一晩でかきあげたという30枚の絵手紙の出来栄えにうなった》
うち1枚は、絵手紙をかく僕の後ろ姿に徳利と杯を配し、中国語で詩を添えている。<絵手紙は小さいが、池の蓮の花のようだ。書いてある言葉を読むと、酔う>
やってくれたなと、心が躍りました。暮らしの中で楽しんで自由に描く「実用の美」が、中国でも受け入れられた手ごたえを感じたね。
5日間の会期中に来場者は2千人を超え、大成功でした。絵手紙は確かに「友情」を伝えたのです。

◆次回はNHKの教養番組に出演し、絵手紙人気に火が付く話を。
(聞き手 元新聞記者・佐藤清孝)

※「小池邦夫のうちあけ話」は、引き続き連載を継続します。

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