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絵手紙のひと 小池邦夫のうちあけ話(21)

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東京都狛江市

◆上武大学(下) 公開講座でがんとの闘病告白
《小池さんの手がき文字「上武大学」は、学内の競技施設や最寄り駅の広告などにも使われている》
「上武大学」の文字は、学内のあちこちにあるんだ。大学案内のパンフレット、伊勢崎キャンパス正門のプレート、送迎バス、サッカーグラウンドにテニスコート……。理事長の澁谷朋子さんから頼まれて、アリーナの「定礎」のプレートや硬式野球部の看板なども書いたね。大学が、ちょっとした僕の“ギャラリー”のようになっている。
JR高崎駅の構内や新町駅ホームの看板、高崎市内を走る国道17号の特大広告にまで、僕の「上武大学」が大書されている。さすがに大学の外にまであると恥ずかしいな。

《2022年秋、大学で小池さんが講師を務めた絵手紙公開講座の模様や絵手紙の軌跡などを紹介する本が大学から出版される》
題名は「まるごと絵手紙 まるごと小池邦夫 in JOBU」。澁谷さんが編集してこんな本まで出してくれた。掲載した公開講座は14年から、大学の学園祭「雑草祭(あらくささい)」などに合わせて開講。僕が大きな影響を受けた棟方志功さんや熊谷守一さんら5人をテーマに6回にわたって話した。
僕が子どもの頃心をつかまれた故郷・松山市の書家、三輪田米山の時には、学生ホールの天井から長さ8メートルの米山の幟のぼり6本を掲げた。奔放自在な書の迫力にみんなびっくりしていたね。幟は大学にプレゼントして今もホールに飾られています。

《「まるごと」の出版を記念して開かれた22年10月の公開講座で、がんとの闘病中だと公表する》
澁谷さんや妻の恭子らを加えた4人によるトークショーで、僕は開口一番「実は今、がんと闘っているんです」と告白しました。
20年7月に胃がんが見つかり、抗がん剤治療を受けてきた。僕の仕事場は狛江市の団地の4階。でも、エレベーターがないから手すりにつかまり、途中の階で休みながらたどり着く。しんどいはずなのに、書くと面白い。テンションが上がる。「正念場ってこれか」と思った。
「まるごと」には、僕が81歳を目前に「正念場」と大きく書いて澁谷さんに送った手紙が載っています。「フーフー荒い息になるけど心地いい。歓びが満ちてくる」と。

◆次回は僕が最も影響を受けた人物についての話を披露します。
(聞き手 元新聞記者・佐藤清孝)

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