■天寧寺開闢記
文化財保護指導員 沖 祐昭
「天寧寺開闢記(てんねいじかいびゃくき)」は、根ケ布天寧寺の開創にまつわるエピソードを記した前半部と、伝説や霊異の類をまとめた後半部により構成されています。
これは、ひとりの著者が書き記した本ではなく、何代にも渡り付け足しを重ねて成立していったもので、執筆が終了したのは文中にある年号から推察して天明8(1788)年頃のようです。
それでは、執筆開始時期はいつ頃なのでしょうか。前半部のほとんどは開山和尚(初代の住職)一華文英(いっけぶんえい)の徳をたたえる内容になっていますが、冒頭に「然るに何れの誰といへる性不詳」と和尚の出自については皆目分からないと記されています。
しかし一華文英をはじめ曹洞宗雲岫派(うんしゅうは)の重鎮の詳細な列伝を集めた「妙亀譫語集(みょうきたんごしゅう)」が享保6(1721)年に甲州広厳院より発行されており、その初版が天寧寺に現存していることから、開闢記の冒頭部については「妙亀譫語集」が開版される以前に書かれたものであると思われます。
開闢記の原本は戦後、紛失し行方知れずとなっていますが、平成7(1995)年に郷土史家の故峰岸久夫氏が写本を元に口語訳と解説を付け加えて編さんしたものが、青梅市中央図書館に所蔵されており閲覧できます。
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