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新型コロナウイルスの変異とコロナワクチンについて

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栃木県下野市

小山地区医師会下野支部 支部長 佐藤 慎

令和2年より世界的な流行を来した新型コロナウイルス感染症に対して、国内では令和3年2月からワクチン接種が開始されました。新型コロナウイルス感染症の流行初期には、その高い重症化率と有効な治療薬がない状況であったことから、新型コロナワクチンは感染症に対抗する唯一の武器として待ち望まれるものでした。ワクチン接種開始から令和5年6月までに、3億8千万回以上のワクチンが接種されています。新型コロナウイルスは現在まで様々な変異を遂げ、変異の度に感染力・重症化率などが変化しています。これに伴い、新型コロナウイルスワクチンも、その有効性に変化がみられてきました。

■ワクチンの効果
ワクチンの効果を判断する一つの指標に「中和抗体価」があります。これは、ワクチンを接種することで体の中にできる抗体の量を測定するものです。東京大学医科学研究所と厚生労働省は日本人の中和抗体価から、BA.4/5ワクチンが現在国内で流行しているXBB.1系統の新型コロナウイルスに対して十分に有効ではないと報告しました。また、厚生労働省は令和5年秋開始接種に向けて、XBB.1対応ワクチンを導入する方針を示しました。ただ、BA4/5ワクチン接種は全く無駄というわけではありません。中和抗体価は短期間で減少していきますが、ワクチンによる重症化予防効果に寄与する他の免疫機構の効果は1年程度保たれると報告されています。

■ワクチンの副反応
すべてのワクチンで副反応はある程度みられますが、注目すべきはファイザー社やモデルナ社の新型コロナワクチンがmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンであることです。mRNAワクチンは、ウイルスのたんぱく質をつくるもとになる遺伝情報の一部をワクチンとして注射し、人の体の中で、この情報をもとにウイルスのたんぱく質の一部(スパイクたんぱく質)がつくられ、それに対する抗体ができることでウイルスに対する免疫ができます。
mRNAワクチンを接種後に報告された重要な副反応に、下記の症状があります。これらの副反応はすべての人に生じるわけではなく、その頻度は高いものではありませんが、mRNAワクチンを反復接種することで、一部の方に心配な副反応も報告されています。

■mRNAワクチンの副反応
▼心筋炎・心膜炎
心臓の筋肉や心臓を包む膜に急性の炎症が生じる疾患で、心臓の動きが悪くなり心不全や危険な不整脈を生じる疾患です。ごくまれではあるものの、mRNAワクチンを接種後に、ワクチンによりつくられたスパイクたんぱく質が心筋細胞に作用して発症したと推定される報告がなされています。
▼ギラン・バレー症候群
細菌やウイルス感染後に、手足に力が入りにくくなるなどの症状がでる疾患で、重症の場合は四肢まひのため介助や、呼吸筋まひのため人工呼吸器が必要になる場合もあります。多くの方は6か月程度で自然に回復しますが、一部の方は1年後も介護が必要となる場合があります。また、その他のワクチンよりも発生頻度が高いことが報告されています。
▼IgG4関連疾患
IgG4は免疫たんぱくの一種で、花粉症では免疫応答を抑制して症状の緩和に作用したり、腫瘍(しゅよう)細胞では抗体を介した抗腫瘍効果を妨げ、間接的にがんの進行を助ける働きがあるといわれています。mRNAワクチンを反復接種した方の一部で、体の中でIgG4が飛躍的に増加することが報告されています。IgG4が増えることでスパイクたんぱく質に対する免疫反応が抑制され、新型コロナウイルスの感染を促進してしまう可能性も考えられています。
(出典【URL】https://doi.org/10.3390/vaccines11050991)

■最後に
現在のコロナウイルスの変異の状況と、現在のワクチンの状況を皆さんに知ってもらうことで、ワクチン接種を受ける際の参考にしていただければと思います。難しい問題ですので、不安な方は『かかりつけ医』の先生にご相談ください。

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