国際交流員ウィルペルトのコラム

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我々は気候のために訴えている!
Wir klagen fürs Klima!
(ヴィア　クラーゲン　フュアス　クリーマ)

前回は、ドイツの気候変動とそれに対する社会的な反応について書きました。今回は、人々の気候保護への連帯を目指す団体Letzte(レッツト) Generation(ゲネラツィオン)(最後の世代)の非暴力的な「市民的不服従」の話から続けましょう。
まず、「市民的不服従」とは何でしょうか?市民的不服従とは、「良心にもとづき従うことができないと考えた特定の法律や命令」(Wikipediaより)に対して抗議し、その法律や命令を排除するために、意識的に法律や規則に違反することです。この方法を使った有名な代表者に、米国のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)がいます。彼は、黒人に対する人種差別的な内容を含む法律を不公平だと感じ、非暴力的な抗議活動であるバス・ボイコット運動によって、それを変えようとしました。
Letzte Generation(LG)は、環境汚染を引き起こしたのは古い世代なのに、いま十分な対策を取らないと将来の世代が負担を負わなければならなくなることを不公平だと考え、「市民的不服従」を用いました。最初は、ドイツの連邦選挙の1か月前から始めた7人の運動家による「気候正義のためのハンガーストライキ」で、3人の首相候補との対話を求めました。最もよく知られているものは、道路封鎖です。運動家たちは瞬間接着剤を使って道路に手を貼り付け、交通を遮断しました。その行為から別名の「Klimakleber(クリマクレーバー)」(気候接着者たち)と呼ばれるようになりました。接着による道路封鎖はドイツ全土で繰り返し行われ、ベルリンなどの空港の滑走路を封鎖したこともありました。いつも警察が駆けつけて封鎖を解除しようとしますが、接着剤の性質上、時間がかかります。
LGの活動に対して彼らが期待したような大勢の人々の連帯はありませんでしたが、気候保護が人々にとって重要でなくなったわけではありません。調査によると、ドイツ人の過半数は、政府が気候変動対策にもっと断固とした行動をとるべきだと考えています。
環境運動家たちは、その願いを政治家に聞いてもらう別の方法として法廷も選択し、ある程度成功しました。ドイツ司法のトップである連邦憲法裁判所は2021年3月、「気候保護法」(前号参照)は十分な実効性と迅速性がなく、基本法(ドイツ憲法)に書かれている国民の基本的権利に適合しないという判決を下したのです。
具体的に、裁判所は基本法の2つの条文に言及しました。1つ目は、第2条第2項の「何人も、生命に対する権利および身体を害されない権利を有する。人身の自由は不可侵である。これらの権利は、ただ法律の根拠に基づいてのみ、侵すことができる」、2つ目は、第20a条※1の「国家は、将来世代に対する責任においても、合憲的秩序の枠内において[中略]、自然的生活基盤※2及び動物を保護する」です。
※1　1994年に基本法に追加された条項
※2　国民が生きるのに欠かせない自然(空気・水・地・植物)のこと

憲法裁判所は、これら2つの条項を、一方では気候を保護する(そして国際レベルでそれに向けて努力する)こと、または気候中立性を達成することを国家に義務付けるものであると解釈しました。そしてもう一方で、それらの義務を果たすために、将来の世代の自由を不当に制限してはならないと解釈したのです。つまり、その時点の気候保護法では直近の目標設定が甘く、ドイツが国際的に約束した「20XX年までに○○を××%削減する」という内容を果たすためには将来の世代がより大きな犠牲を払うことになってしまう、とドイツ政府に突き付けたということです。
その結果、ドイツ政府は、気候保護法を強化する必要に迫られました。2030年までに、温室効果ガス排出量を1990年比55%削減する予定だったところを65%へ。そして中立性を達成する期限は、2050年から2045年に繰り上がりました。
しかし現時点では、ドイツがこの目標を達成できるかどうかは疑わしいです。2022年、ドイツは全体での目標は達成しましたが、建設分野と運輸分野は2年連続で自分野に設定された目標を達成しませんでした(運輸分野を率いるのは、自動車の速度制限を絶対的に拒否しているFDP(自由民主党)の大臣で、削減目標の達成には消極的です)。環境運動団体が再び法廷に訴え、上級行政裁判所は両省に対し、気候目標を遵守するための即時プログラムを立ち上げるよう命じました。
ドイツが気候目標を達成するかどうか、そしてどのように達成するか、今後も目が離せません。