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自治医科大学附属病院 連携協働コラム(1)

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栃木県下野市

■脂肪肝を予防・改善するための食事と栄養のポイント
自治医科大学附属病院 管理栄養士 川畑奈緒

◇はじめに
日本肝臓学会と日本消化器病学会は2023年9月29日、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic(ノンアルコホリック) fatty(ファッティー) liver(リバー) disease(ディズィーズ)、NAFLD)と非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis(スティアトゥヘパタイティス)、NASH)の病名変更に関する声明を出しました。“alcoholic(アルコホリック)(アルコール依存症の)”及び“fatty(太った)”の単語を含む病名は不適切用語と見なされることが名称変更の理由です。脂肪性肝疾患をsteatotic(スティアトゥティック) liver disease(SLD)と総称し、従来のNAFLD、NASHはメタボリック症候群の基準の一部を満たす場合に限定して、metabolic(メタボリック) dysfunction(ディスファンクション) associated(アソシエイティッド) steatotic liver disease(MASLD)、metabolic dysfunction associated steatohepatitis(MASH)と診断することになりました。なお、これら病名の日本語訳は今後両学会で検討し、ガイドラインも新たな病名と分類に従って改訂していく予定です(1)。
MASLDとその進行形であるMASHは、現代社会で増加しています。これらの疾患は肝臓に脂肪が蓄積し、炎症を引き起こすことから、適切な食事と栄養管理が非常に重要です。この記事では、MASHとMASLDの予防及び改善するための食事と栄養の基本的な内容を提示し、具体的なレシピを紹介します。

1.MASHとMASLDの問題
◇MASLDの概要
MASLDは、肝臓に脂肪が蓄積する疾患で、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などのメタボリックシンドロームと密接に関連しており、これらの要因が肝臓に負担をかけ、炎症を引き起こす可能性があります。

◇MASHの概要
MASHは、肝臓の炎症と線維化(肝臓の中に大量の硬い線維組織が作られること)を特徴とするMASLDの進行した状態です。MASHが進行すると、肝硬変や肝臓がんのリスクが高まり、深刻な健康問題となります。

2.MASHやMASLDを予防するための食事と栄養
ご自身の体重・体格を確認しましょう。BMI[体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]が25以上になっていないか、ウエスト周囲計が増えていないか(男性85cm以上、女性90cm以上)に注意し、以下の内容に気を付けましょう(2)。
•食べ過ぎに注意する。
•清涼飲料水や缶コーヒー、果物のとり過ぎに注意する。
•ラードやバターなど動物性の油は、飽和脂肪酸(※1)が多いので控える。
•揚げものや炒めもの、コレステロールを多く含む卵を使用した料理なども、とり過ぎに注意する。
•トランス脂肪酸(※2)を含むマーガリンやショートニングを使用した菓子パンや洋菓子なども避ける。
•多価不飽和脂肪酸(※3)を多く含む青魚や、ビタミンEを含む緑黄色野菜を積極的にとる。

※1 飽和脂肪酸とは、炭素と炭素の間に二重結合がない脂肪酸のことです。常温で固体のことが多く、動物性の脂肪に多く含まれます。とり過ぎるとコレステロール値を上げたり、動脈硬化のリスクを高めたりする可能性があります。
※2 トランス脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の中でも、炭素間の二重結合がトランス型(水素原子が炭素間の二重結合をはさんでそれぞれ反対側についている形)のものを指します。天然に牛や羊などの反芻(はんすう)動物の脂肪や乳製品に微量に含まれるほか、油脂の加工・精製過程でできることがあります。トランス脂肪酸は心臓病のリスクを高めることが示されており、摂取量をできるだけ少なくすることが勧められています。
※3 不飽和脂肪酸とは、炭素と炭素の間に二重結合がある脂肪酸のことです。常温で液体のことが多く、植物性の油、魚油に多く含まれます。コレステロール値を下げたり、血液をサラサラにしたりする効果があります。二重結合の数によって一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。

3.MASHやMASLDを改善するための食事と栄養
肥満がある場合は、体重の7%を目標に減量し、徐々に標準体重(BMI22)を目指すことが勧められています。例えば、体重90kgの場合は、まずマイナス6kgを目標にしましょう。7%以上の体重減少によりMASHの肝組織の改善効果がみられ、10%以上の体重減少で肝線維化改善効果がみられるとされています(3)。糖質および脂質を中心に、エネルギー摂取を減らし、運動を取り入れましょう。また、アルコール摂取は肝臓に負担をかけるため、可能な限り控えることが望ましいです。

【文献】
(1)Rinella ME, et al. A multi-society Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. J
Hepatol 2023 June 20; DOI:https://doi.org/10.1016/j.jhep.2023.06.003
(2)日本消化器病学会. 患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド:【HP】https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/pdf/04_nafldr.pdf
(3)日本消化器病学会・日本肝臓学会. NAFLD/NASH診療ガイドライン 2020(改訂第2版).pp44-45

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