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自治体の皆さまへ

国際交流員ウィルペルトのコラム

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栃木県下野市

■多様性の中の統合In Vielfalt geeint(イン フィールファルト ゲアィント)

EUの欧州議会の選挙が、6月6日から9日まで行われます。皆さんにとってはあまり意味のないことかもしれませんが、海外在住のドイツ人である私は、ドイツでの最終居住地の自治体の選挙人名簿に登録されるよう申請書を送り、投票するための選挙の書類がやっと届きました!
「EUってなんでしたっけ?」という方もいるでしょうが、日本でも時々ニュースに登場すると思います。例えば、EUがアップル社に対し、USB-Cコネクタを使用するよう要求したことを聞いたことがあるかもしれません。これにより、EUは、使用者が充電ケーブルを何種類も購入する必要をなくし(経費を節約でき)、不要な電気ゴミを減らすことを求めました。他にも、EUの加盟国間を旅するとき、スマホのローミング料金が廃止され、国境審査なしで行き来でき、同じ通貨で支払いができるので、楽で便利であることも知られています。
ですが、欧州住民の自由と繁栄を保証することがEUのすべてではありません。
一度、始まりに戻りましょう。もともと、EUはヨーロッパで二度と戦争を起こさせないという目的で作られたものです。ドイツとフランスが16世紀からErbfeindschaft(エアブファインドシャフト)「宿敵」と呼ばれていたこともあり、ヨーロッパを中心に2回も世界大戦が起こりました。戦争をするには戦車や武器、弾薬が必要であり、それらを生産するには鉄鋼と、工場にエネルギーを提供する石炭が必要です。そう考えて、第二次世界大戦後、フランスは「戦争を考えられないものにするだけでなく、実質的に不可能なものにする」ためにこう提案しました。宿敵であっても、フランスとドイツをはじめ、他の欧州諸国も、自国の石炭・鉄鋼産業を運営すべきではなく、関係国と一堂に会し、議論し、一緒に決定すべきである、と。1951年、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクは自国の石炭・鉄鋼の産業を1つにまとめ、「EuropäischeGemeinschaft für Kohle und Stahl(オイロペーイシェゲマインシャフトヒュアコールウントゥシュタール)」(欧州石炭鉄鋼共同体)という組織を設立しました。それは平和的な目的のために機能し、戦争の荒廃から欧州を再建するのに役立つものでした。
欧州石炭鉄鋼共同体だけではなく、この6か国は、他のさまざまな分野での緊密な協力も検討し、さらに2つの組織の創設に至りました。原子力の平和的応用を開発することを目的としたEuropäische Atomgemeinschaft(オイロペーイシェアトームゲマインシャフト)( 欧州原子力共同体)と、加盟国間に共通市場と関税同盟を創設し、戦後の経済復興を促進したEuropäischeWirtschaftsgemeinschaftェ(オイロペーイシェヴィアトゥシャフツゲマインシャフト)(欧州経済共同体)です。この3つの組織が、やがてEuropäischeGemeinschaft(オイロペーイシェゲマインシャフト)(欧州共同体)になり、1993年にEuropäische Union(オイロペーイシェウニオン)(欧州連合)へと移行しました。途中で7回、新たに参加を希望する国々を加え、現在では27か国が加盟しています。そのためEUは、すべての発表や広報を24の公用語で行っています。想像してみてください。日本が中国や台湾、韓国、北朝鮮と共にこのような同盟を結んで、戦争を起こさせないために、自国の資源と鉄鋼業をその国々と共同で運営することを。そこから、日本は自国の経済などをそれらの国々と繋げます。自国の会社を守るという考えを捨てて、同盟国すべての経済が栄えるために、中国・台湾・韓国・北朝鮮からの製品に対する輸入関税を撤廃し、日本で現地と同じように安く販売するようにします。代わりに、日本も輸入関税なしでこれらの国で日本製品を販売できるようになります。望めば、いつでも中国・台湾・韓国・北朝鮮に引っ越し、住み、制限なしで働くことができ、中国人・台湾人・韓国人・北朝鮮人も、ビザや制限なしで日本に住み、働くことができます。大統領選挙以外のすべてにおいて、同盟国の国籍をもっている人々が日本人と同じになります。
想像できましたか?
ヨーロッパ人にとって、第二次世界大戦からEUと今の我々の自由に至ったことの、奇想天外なあり得ない感が分かっていただけるでしょう。

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