■荻原井泉水書画(おぎわらせいせんすいしょが)「雲巌寺」
今回は、荻原井泉水による書画作品「雲巌寺」を紹介します。掛軸に仕立てられており、本紙の寸法は、縦37.5cm、横44.8cmです。
荻原井泉水(1884~1976)は、明治17年(1884)、東京生まれで、本名は藤吉(とうきち)と言います。東京大学を卒業し、俳人として活躍しました。「層雲(そううん)」という俳句結社を主宰し、自由律俳句を推進していきました。彼は松尾芭蕉の研究家でもあり、『旅人芭蕉』や『奥の細道ノート』など多くの著書があります。
本作品は、芭蕉の傑作紀行『おくのほそ道』の「雲巌寺」の章を記し、雲巌寺の風景を俳画的に描いたものです。本章末尾近くに配される芭蕉の発句(ほっく)「木啄(きつつき)も庵(いほ)はやぶらず夏木立」まで記し、その後の「と、とりあへぬ一句を柱に残侍(のこしはべり)し」をあえて省略しています。そしてその代わりに、「連竟(れんきょう)」として「牡丹の開く音を聞くべし」という井泉水の一句を記しているのです。
上記の芭蕉の発句(五七五)を受け、七七で詠んだ脇句(わきく)という位置づけとなり、発句と響き合う表現となっており、本作品の輝きを増していると言えましょう。
本作品は、芭蕉展示室で展示中です。
問合せ:黒羽芭蕉の館
【電話】0287-54-4151
<この記事についてアンケートにご協力ください。>