■田中正造を語り継ぐ
・針ヶ谷照夫(はりがやてるお)さん
・島野薫(しまのかおる)
▽「真の文明は山を荒らさず」、今も学ぶこと多く
足尾山地を模して積み上げた黒い砂利の上に、「足尾銅山」の立て札。ブルーシートの渡良瀬川の流れが、白い砂利の関東平野へ下り、群馬と栃木県境沿いに旧谷中村、ハート形の現遊水地へと注ぎ込みます(写真上)。
ここは、群馬県館林市にある「足尾鉱毒事件田中正造記念館」です。上下流の「鉱毒被害」の全体像を見せたいと、会員が裏庭に手作りしたのが、長さ約10m、幅約7mのジオラマ。位置関係が一目で分かり、体感もできると来館者に人気です。
私、針ヶ谷照夫(同上の左)は、このNPO法人の理事長です。私が立つ辺りが、館林市。鉱毒事件の中央に位置し、田中正造翁が鉱業停止を求め、谷中村を守る活動拠点としたこの地に18年前に開館しました。
「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず…」。正造翁は鉱毒問題に生涯をかけただけでなく、環境や自然との共生、人権などスケールの大きな思想を持ち行動しました。それを学び、今日に生かしたい。
私、島野薫は事務局長(同右)です。活動は多彩です。企画展では、学生写真家が記録した「半世紀前の谷中村写真展」を8月末まで開催中(同下の右)。当時、彼らが寝泊まりしたのが針ヶ谷さん宅の納屋で、昨年、偶然に再会し実現しました。常設展は歴史的な資料や正造翁の書など。遊水地などのツアー、勉強会も開きます。
「若い世代に語り継ぐこと」も大きな柱です。小学校を訪ねての出前講座、小学生らと足尾に行く植樹活動などなど。
会員は約160人。私たちが丁寧に説明します(同下)。無料。開館は火木土日。(【電話】0276-75-8000)へ。
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