今回の徳川美術館との連携企画は『伯仲燦然』と銘打っています。『伯仲』とは「よく似ていて優劣のないこと」、『燦然』は「きらきらと光り輝くさま」を意味する言葉で、すなわち『本歌(ほんか)(写しの元となった原作=本作長義)』と『写応募締切:山姥切国広』という伯仲の出来の二振りが、輝かしく同時に展示されることを表します。刀剣において『本歌』と『写し』が共に重要文化財に指定されている唯一の事例であり、平成9年の東京国立博物館での展示以来、28年ぶりの両刀の共演に、ぜひご期待ください。
■本作長義(ほんさくながよし)
❖国指定重要文化財
南北朝時代に活躍した刀工・長船長義(おさふねながよし)の作品です。この刀は、もともと太刀(たち)(馬上戦向きの大振りな刀)として作られましたが、移り変わる持ち主の身長や刀の使い方に合わせて磨(す)り上げられ、打刀(うちがたな)(徒歩戦(かちせん)向きの太刀より、やや小振りな刀)に姿を変えました。磨り上げにより、茎(なかご)にあった長義の銘(作者名や年紀などの署名のようなもの)も一緒になくなってしまったため、顕長は、国広に『長義作の刀であること』『北条氏から拝領した刀であること』などを茎に刻むよう命じました。現在、茎にある銘は、国広が入れたものです。
■山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)
❖国指定重要文化財
安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した刀工・国広の作品です。国広は『新しんとう刀の祖』と言われ、新たな時代の先駆けとなる刀を作った人物であるとともに、一門を形成し、たくさんの弟子を育てました。
国広は、打刀に姿を変えた『本作長義』をもとにして、この刀を作ったと考えられていますが、刃文(はもん)などに国広オリジナルの作風が見られます。この刀は時代の変遷とともに持ち主も移り変わってきました。その中で「ある時の持ち主がこの刀で山姥を斬った」という伝説が誕生し、『山姥切国広』という名前がつきました。
◆日本刀の主な部位
▽目釘孔(めくぎあな)
『目釘』を差す孔。目釘は、刀の持ち手『柄(え)』に茎をはめ込んだとき、刀身が柄から抜けないように固定する小さな棒。
▽刃文(はもん)
焼入れ時、焼刃土(やきばつち)を塗って作り出す模様。スポットライトに照らし角度を変えて見てみると浮かび上がる。
▽横手(よこて)(筋(すじ))
鋒と平地(ひらじ)(鎬から刃先までの部分)を区切る筋。
▽鋒(きっさき)
▽茎(なかご)
▽区(まち)
茎との境となる段差がある部分。棟側の区を『棟区』、刃側の区を『刃区』という。
▽反(そ)り
刀の湾曲のこと。鋒と棟区を結んだ線(点線)と棟の間でもっとも長い距離が反りの長さである。
▽棟(むね)
刃がついていない背の部分。『峰(みね)』ともいう。
▽鎬(しのぎ)(筋(すじ))
刃と棟の間の高くなっている部分。
※詳細は本紙PDF版7ページをご覧ください。
問合せ:総合政策課
【電話】20—2103
<この記事についてアンケートにご協力ください。>