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2050 Sustainable Vision那須塩原~環境戦略実行宣言~(2)

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栃木県那須塩原市

■那須塩原市の環境政策
全国に先駆けたネイチャーポジティブ宣言。
ネイチャーポジティブをけん引する本市の環境政策について、環境学の権威「公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES(アイジェス))」理事長の武内和彦(たけうちかずひこ)氏と渡辺市長が対談を行った。

●スペシャル対談
渡辺美知太郎 市長×武内和彦 地球環境戦略研究機関(IGES)理事長

▽「地方でもできる」ではなく「地方から成功事例をつくる」
那須塩原で付加価値を高めていくため環境政策を進めていく
渡辺美知太郎 市長

▽「低炭素・資源循環・自然共生」の統合的アプローチに基づいた「地域循環共生圏の実現」を
環境制約の中で生きていることが、豊かな社会作りにつながる
武内和彦 理事長
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

1951年和歌山市生まれ。
1974年東京大学理学部卒業、1976年同大学院農学系研究科修士修了。
農学博士。東京都立大学理学部助手、東京大学農学部助教授等を経て、1997年~同大学院農学生命科学研究科教授。
2008~2016年、国連大学副学長/上級副学長を兼務。
2012~2019年、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)機構長・教授/特任教授。
2016年~国連大学サステイナビリティ高等研究所客員教授。
2017年より地球環境戦略研究機関(IGES)理事長。
2019年~東京大学未来ビジョン研究センター特任教授。

地域循環の社会形成に向けたサステナブルな取り組みの意義と那須塩原の可能性

渡辺:本市は昨年9月に、「2050 Sustainable Vision(サステナブルビジョン)那須塩原~環境戦略実行宣言~」を表明し、ネイチャーポジティブ、カーボンニュートラルおよびサーキュラーエコノミーの三つを柱とした環境政策を推進し、これらの相乗効果による同時実現を目指しています。
また、国民一人一人のwell-being(ウェルビーイング)(身体的にも精神的にも社会的にも満たされた状態を指す言葉で、一人ひとりが幸福であること)を最上位の目的に掲げた国の第六次環境基本計画とも整合した取り組みにしたいと考えています。
今回、地球規模の課題に対し、地方自治体が三本柱の取り組みを行うことの意義、地方の地域に対し特に期待する点などを伺えればと思います。市民には取り組みへの理解を、市外の方には本市へ興味をもっていただく機会になればと考えます。

武内:第一次安倍内閣(2006年から2007年)のとき、「21世紀環境立国戦略」の策定に携わる機会を得ました。その際、多岐に渡る環境問題に対処するには、個別ではなく「統合的な取り組みが必要だ」と主張しました。具体的には、低炭素、資源循環および自然共生の三つが柱になると提案し、それが戦略に反映されました。
皆さんの生活の観点から見ると、この三つがバラバラではあり得ないと考え、国の第五次環境基本計画において「低炭素、資源循環、自然共生の統合的アプローチによる地域循環共生圏の実現」を提唱しました。
その際、低炭素と資源循環を切り分けるのではなく、一つの循環のなかの相乗効果ととらえ、一方の自然共生については、「人間は自然の一部」ととらえるべきだと主張しました。
ちょうどCOP10(コップテン)(生物多様性条約第10回締約国会議2010年)が名古屋で開催され、日本政府が「自然と共生する世界の実現」の長期目標を提唱したのです。「人間は自然の一部」というアジア的な考え方には反対もありましたが、結果的に認められ、愛知目標が採択されました。
現在の昆明(こんめい)・モントリオール生物多様性枠組における「2050年ビジョン」は、愛知目標の考え方がそのまま継承されています。
現在の枠組みは、生物多様性における現状を把握し、その保全や回復に向けて実際にアクションを起こし、その結果をモニタリングするPDCAサイクルを回す仕組みとなり、非常に良い形になったと思います。
そのような考え方をローカルに展開していく舞台の一つとして、那須塩原市がふさわしいのではと私は考えています。那須塩原といえば畜産ですので、「牛ふん」はエネルギー源にもなるし、堆肥として耕畜連携にもつながります。そのまま地域循環共生圏として具体的に展開できますね。

渡辺:はい、地方だからこそできることが非常に多いと感じています。「地方でもできる」ではなく「地方から成功事例を作る」ということが、地方に住む者のミッションだと思っています。
ネイチャーポジティブについては、自然が豊かで身近に感じられ、30by30(2030年までに地球上の陸と海の30パーセント以上を保全地域とすることを目指す国際目標)より高い目標である50by30を設定し、より踏み込んだ取り組みを行っています。
サーキュラーエコノミーについても、身近にあるもので実現できるものです。
こちらでは余った食材をコンポストに入れて堆肥にすることが当たり前なのですが、都会から訪れた人はそういうことにも感動しています。
カーボンニュートラルは、再生可能エネルギー導入のポテンシャルが高いので、電力の自給自足ができるのではないかと考えています。
この三本柱は、資源が多くある地方では身近な取り組みとして行えますので、那須塩原の地でしっかり成功事例を築いて全国に普及させたいです。

武内:経団連とも一緒にネイチャーポジティブを目指したさまざまな取り組みを進めています。以前は、脱炭素には積極的に取り組むのに、自然共生については環境を守る側面が強かったためか、具体的な取り組みは活発ではありませんでした。ところが、今は自然を積極的に活用して、自然を取り戻す、回復させるという新しい基調になってきましたね。

渡辺:コロナ禍になって、グランピングとか自然体験とか、ある意味で自然を省みる機会ができたのだと思っています。自然豊かなところに行きたいという移住者も、本市を選んでくれます。
ネイチャーポジティブが地方創生にもつながっていくことをすごく感じています。

~次ページに続く~

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