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■「小沢浩先生講演会『発達障害と不登校について』のご紹介」
公立久米島病院 小児科 渡邉 幸
東京都島田療育センターはちおうじ(通称:島はち)と公立久米島病院との発達支援連携システム「久米島ゆいまーるプロジェクト」は今年で5年目を迎えました。本プロジェクトでは島はちから月1回リハビリスタッフや医師が来島し、久米島病院でお子さんの療育や診察を行い、病院スタッフへの専門的助言・指導を行ったり、年数回専門職向けの勉強会や講演会等を行っています。
今回は11月3日に行われた小沢浩医師(島はち所長)による講演会の中から「不登校について」ご紹介いたします。
1)不登校の背景
不登校は中学生6.0%、小学生1.7%(令和4年)であり、30年前と比べ中学生6倍、小学生12倍に増えています。
不登校になる背景としては、1)勉強不適応、2)対人関係不適応、3)心身の不調、4)家庭的要因などがありますが、最近ではいわゆる「境界知能」( IQ:70~84)の子どもの中で学習困難から不登校に至る例が少なくないことが指摘されています。小沢先生らの研究では、中学生においては境界知能の児においては、I Qが高めの児の方が不安や抑うつの指標が高いという結果もあり、子どもの学習困難にどのように対応するかは大きな課題と言えます。
2)不登校の経過
一般的な経過としては、少しずつ登校できなくなる前駆期があり、親子ともに最も辛い混乱期を通過し、休養期を経て少しずつ外に向かうことができる回復期へと向かいます(図1)。
不登校のお子さんの中には、学校に行けなくなる過程での様々な辛い体験がトラウマ(心の傷)となってしまうことがあります。トラウマ記憶はその時の映像・感覚・感情がそのまま「冷凍保存」されるため、日常のふとした時に記憶が蘇ると(フラッシュバック)、まるで今そのことが起こったような感覚となります。それが繰り返されることにより、神経が高ぶった状態が続いたり、その感覚を避けるためにぼーっとしたりと、お子さんの心身への大きな負担となります。
図1 小柳憲司「学校に行けない子どもたちへの対応ハンドブック」新興医学出版社
3)不登校の支援
小沢先生は、段階的に不登校支援を行っていくために「不登校の居場所分類」(図2)を提案されています。子どもの現在の行動範囲を知り、現状を知ることで、無理のない支援を考えていくことができます。
また、不登校のお子さんはトラウマ記憶をはじめとした辛い「過去」の記憶に悩まされやすいため、支援者はお子さんが「今」好きなこと、楽しいと思えることを共有するなど、「今・ここ」を豊かにすることを意識した関わりが大切です。小沢先生は診察室で手品を通して親子に「笑い」を届けたり、八王子不登校時支援ネットワーク(「プラス・パス」Hpあり)を立ち上げて不登校のお子さんの新たな居場所を提供したりと、不登校の子どもたちの「今・ここ」を豊かにする取り組みを沢山されています。
久米島でも不登校のお子さん一人一人の「今・ここ」が豊かになるためにどんなことが出来るのか、多くの皆さんと考えていきたいと思いました。不登校支援や居場所づくりにご関心のある方はぜひ渡辺までお声かけください!
図2:「不登校の居場所分類」小沢浩先生作成
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