■蛇と絣(かすり) 模様に込められた祈り
今年は巳年。そこで、南風原文化センターに所蔵している「蛇」にまつわる資料をご紹介したいと思います。
南風原はかすりの里として知られています。南風原文化センターでは、南風原のみならず世界の絣織物を収集しています。今回ご紹介するのは、インドネシアのフローレス島リオ族の絣織物。とても細かい模様は、蛇の皮を模したものです。しかし、なぜ蛇柄なのか?これはリオ族に伝わる神話に由来します。
この神話は、その昔、太陽から舞い降りた巨大な蛇がフローレス島に姿を変えたというものです。潮の干満は蛇が浮き沈みするためにおこり、蛇の怒りにあうと大暴風雨が生じ、蛇の口からは猛烈な炎が吐き出されると伝わります。炎は火山の噴火のことだと考えられます。この神話からは、人々が天災を蛇の魔力によるものとして畏れていたことがうかがえます。絣で織られる蛇の模様には、天候を司る蛇に対し、災厄をはらう祈りがこめられているのでしょう。
南風原では、字兼城の綱曳きで、蛇のような龍のような生き物「ジャー」が雨を司る象徴として登場します。遠く離れたインドネシアと沖縄で、少し似た言い伝えがあるとは興味深いですね。
また、絣の柄に意味があることも共通しています。南風原の絣織物の柄の種類は600種類あり、ひとつひとつに意味があります。人々が布にどんな意味や想いを込めて織ったのか、織物の柄について調べてみるのも面白そうです。
今年は南風原の織物生産の中心を担う琉球絣事業協同組合が設立から50周年を迎える年でもあります。南風原や世界の絣織物にふれてみる一年にしてはいかがでしょうか。(前城)
参照:吉本忍著『インドネシア染織大系 上巻』紫紅社
問合せ:南風原文化センター
【電話】889-7399
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