多賀町立博物館

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『15年ぶりのリングのない土星、見れるかな?』

◆土星とリング
私たちの太陽系には水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8個の惑星があります(※1)。その中でも一番人気のある惑星と言えば土星です。何と言ってもとても美しいリングをもった惑星です。
ただし肉眼で見た土星はふつうのピカッと光る星にしか見えません。土星のリングを見るには天体望遠鏡が必要です。
この土星に初めて望遠鏡を向けてリングを発見したのは400年前のイタリアの科学者のガリレオ・ガリレイでした。当時イタリアにいたガリレオは凸レンズを2枚使って見ると遠くのものが大きく見えるという話を聞いて早速に作ってみました。望遠鏡の始まりです。最初は地上の物を見ていたのですが、夜空に向けてみたところびっくりする発見がいっぱいありました。月の表面は穴がいっぱいあいていてデコボコです。木星のまわりには小さな星(衛星)がいくつも回っていました。そして土星を見てみると本体のまわりに何かがくっついています。ただそれが何なのかわからなくて、ガリレオはノートに「土星には大きな耳がある」と書いています。ガリレオの望遠鏡はレンズの直径が4cmほどの小さな望遠鏡だったので、耳のように見えたのです。それがリングだと分かったのはそれから50年もたってからのことでした。
ガリレオには耳に見えた土星のリングですが、最近の望遠鏡では本当に美しいリングの姿が楽しめます。土星と言えばリング、リングと言えば土星と言われるくらいです。どうしてこんなリングができたのだろうと不思議に感じますが、リングの光をよく調べるとそれは無数の氷の集まりなのが分かりました。土星は太陽からうんと遠くてその表面は-180度の極寒の世界です。そう考えるとたくさんの氷があっても不思議ないようにも思えます。そんな極寒の世界で彗星(ほうき星)が土星に衝突して、彗星の本体の氷が土星のまわりを取り巻いてリングができたと言われています。

◆リングがある惑星
そんなリングですが、最近はさまざまな惑星をとりまくリングが発見されています。1977年に天王星が9等の恒星を隠す現象をアメリカの天文学者が観測していて、天王星のまわりに何かがあるのに気づきました。よく調べてみるとそれは天王星のリングでした。その2年後の1979年にアメリカの惑星探査機ボイジャー1号が木星に接近すると、なんと木星のまわりに細いリングが取り巻いているのが発見されました。さらに1989年に惑星探査機ボイジャー2号が海王星に接近すると、海王星のまわりにもリングが取り巻いているのが発見されました。このことから太陽系の8個の惑星のうちの4個にはリングがあることが分かりました。なんと半分の惑星にはリングがあったのです。また今年の9月にはオーストラリアの研究者が地球上のクレーターの分布から、4億年前の地球にはリングが取り巻いていたらしいという論文を発表しました。これについてはまだ本当かどうか微妙なところですが、宇宙の中にはリングを持った星はどうもたくさんあるらしいと言われています。

◆リングのない惑星
リングがあるのは土星だけではないことがわかってきましたが、それでも望遠鏡で美しいリングが見られるのは土星だけです。ところがこの土星のリングが消えてしまうという話が出てきました。とは言っても本当に消えてなくなるわけではありません。土星のリングは幅が2万5000kmもあるのですが、厚みは100メートルほどしかありません。そんなとんでもなく薄っぺらいリングなので、本当の真横から見ると薄すぎて見えなくなることがあるのです。これを土星のリングの消失と言います。この現象が3月24日と5月7日に起こります。正直なところリングのない土星と言うと木星とほとんど同じような姿なのですが、この現象は15年ごとにしか見られないのでとても貴重な現象です。
ただちょっと残念なのは2025年の土星はみずがめ座にあるのですが、3月のみずがめ座のすぐそばに太陽があるのです。そして太陽の強烈な光のせいで土星を見るのはとても難しいと思われることです。ただ地上から見るのは難しいですが、最近は宇宙空間に大きな望遠鏡がいくつも浮かんでいて、そうした望遠鏡からは太陽に近くても土星の美しい姿を見せてくれます。リングのない土星は15年ごとにしか見られない貴重な姿です。この機会にぜひリングのない不思議な土星をお楽しみください。

※1　昔は冥王星も惑星と呼ばれていましたが、月よりも小さいことがわかって、準惑星に格下げされてしまいました。

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