■森と湖が育んだフィンランドと滋賀県の文化
佐川美術館
学芸員:深井千尋(ふかいちひろ)
芸術の秋、佐川美術館ではこれまで日本で紹介される機会が少なかった北欧の絵画に焦点を当てた展覧会を開催しています。今回はその中から、フィンランドの絵画について紹介します。
「森と湖の国」といわれるフィンランドの人々は、森に入ってベリーを摘んだり、サウナの後に凍った湖に入ったり、自然と共に生活しています。暮らしに密接した自然は、文化形成にも重要な役割を果たしました。19世紀、フィンランドの画家たちが祖国に独自の絵画表現を追求しはじめると、母国を象徴する風景として雄大な山岳や森、湖が描かれました。また、森や湖は民間伝承にも深く関わり、人々を水の中に引き込む悪霊・ナッキや漁師たちが大漁を祈願する水の女神・ヴェッラモなど、水にまつわる神々や精霊も絵画の題材になりました。
山脈に囲まれた盆地の中に琵琶湖を有する滋賀県でも、水の神が住むといわれる伊吹山や、安曇川で材木を運ぶ筏いかだ乗りたちを守るシコブチ信仰など、山や水と結びついた民間伝承が受け継がれています。自然の中で独自の文化を育んできた滋賀県に暮らす私たちにとって、風土における共通点が多いフィンランドの絵画は、異国でありながら親しみを感じさせます。
よく知らない北欧の絵画も、文化的な共通点に目を向けてみると親近感が湧いてきませんか?この秋は、自身の暮らしとの接点を探しながら、新たな芸術作品との出逢(であ)いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。
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